コラム

<VOICE>銃の「命」を確保する匠の技-特殊かつ高度な技能に支えられる生産現場の声-

豊和工業株式会社 火器事業部長 関谷 勝彦(せきや かつひこ)

当社は、戦前より約80年にわたり防衛産業に携わらせていただいております企業であり、国内唯一の小銃メーカーです。
小銃の製造は、特殊かつ高度な技能をもつ作業者の存在によって支えられています。その製造工程には、たとえば、銃の「命」とも言える命中精度を確保するために必要な、銃身の「歪(ゆが)みとり作業」があります。この作業は、機械で行なうことができず、人の手に委ねられる作業です。これまで長年にわたり培(つちか)われた作業者の技能によって、世界でも屈指の命中精度を誇っていると自負しております。
製造現場においては現在、この工程を維持・育成していくために、技能の伝承に取り組んでおりますが、この作業は誰にでもできる作業ではなく、作業者の「センス」も必要となってきます。銃身のどこが、どの程度歪んでいるのかを自分の「目」で見極め、この歪みを即座に修正することが求められます。このような作業者を育成するには、5年以上の期間が必要であり、作業者の人選と技能の伝承期間が長期にわたることに苦労しております。
さらに当社では、OJTによる技能の伝承のほか、作業者に防衛の一端を支えているという意識を持たせることを最重要視しております。このことが銃の品質を維持することにつながり、技能の維持・育成には最も重要であると考えています。

「歪み取り作業」
「歪み取り作業」
 
前の項目に戻る      次の項目に進む