コラム

<VOICE>エジプトの地より -防衛駐在官のコメント-

在エジプト・アラブ共和国日本国大使館 防衛駐在官 1等陸佐 小出 昌典(こいで まさのり)

11(平成23)年1月、チュニジアで始まった「アラブの春」は、すぐにエジプトにも波及しました。首都カイロは一時無秩序(ちつじょ)状態となり、日本大使館は在留邦人および邦人旅行者の安全確保と退避活動のため、催涙(さいるい)弾が飛び交う市内各所の状況把握や、空港における水、食糧、医薬品などの邦人への提供に全力で取り組みました。
エジプトは79(昭和54)年、アラブ諸国で初めてイスラエルと平和条約を締結した国ですが、両国の平和条約は現在でも中東地域安定化の重要な鍵を握っており、戦略的な要衝であるスエズ運河の安定的な通航確保ともあいまって、エジプトの動向は各国の国益にも大きく影響しています。
現在エジプトは、民主化に向けた政治プロセスの途上にありますが、シナイ半島および周辺各国に広がりつつあるイスラム武装勢力の動向も含め、エジプトにおけるイスラム勢力の台頭がおよぼす影響について今後とも注目していく必要があると考えています。
防衛駐在官の業務は軍事関連の公開情報や、各国の駐在武官やエジプト軍関係者から入手した情報などの分析・報告、自衛隊の艦船や航空機の受け入れ、当地PKOセンターへの支援など、多岐にわたっています。今後とも有益な情報を報告するとともに、わが国とエジプトとの関係をより深められるよう、精一杯頑張っていこうと思います。

カイロPKOセンターに自衛官講師を迎えて(右が筆者)
カイロPKOセンターに自衛官講師を迎えて(右が筆者)
 
前の項目に戻る      次の項目に進む