コラム

<解説>中国による南シナ海における海洋活動の活発化について

南シナ海においては、中国や東南アジア諸国の間で島や礁の領有権などに関する主張の対立があり、当事者間でこれまで秩序形成や問題解決などに関する法的拘束力のある合意は得られていない。中国は、92(平成4)年には南沙諸島(Spratly islands)および西沙諸島(Paracel islands)などが中国の領土である旨明記された「領海および接続水域法」を制定したほか、南シナ海における自国の「主権、主権的権利および管轄権」が及ぶと主張する範囲に言及した09(同21)年の国連宛口上書にいわゆる「九段線」の地図を添付した。また、12(同24)年には、南沙および西沙諸島などを管轄するとされる三沙市を設置するなど、領有を前提として国内法上の措置を進めている。この「九段線」については、国際法上の根拠が曖昧であるとの指摘があり、南シナ海における南沙および西沙諸島の領有権などをめぐる東南アジア諸国との主張の対立を生んでいる。
実際に中国は、以下のような動きを見せ、南シナ海への進出を徐々に進めてきたと指摘される。

<1> 73(昭和48)年に米軍が旧南ベトナムから撤退した後、74(同49)年に旧南ベトナムとの軍事衝突を経て、 西沙諸島を事実上支配
<2> 80年代に旧ソ連のベトナムに対する軍事支援およびプレゼンスが低下する中、88(同63)年にベトナムとの軍事衝突を経て、南沙諸島の一部の岩礁を事実上支配
<3> 92(平成4)年に米軍がフィリピンから撤退した後、95(同7)年に南沙諸島のミスチーフ礁を事実上支配

また、中国が領有権を主張する島や礁を事実上支配する際には、周辺海域における公船派遣を進めつつ、力の行使によって岩礁の占拠および施設の構築を行ったと指摘されている。

中国が主張する「九段線」
中国が主張する「九段線」
出典:米国防省「中華人民共和国の軍事および安全保障の進展に関する年次報告」(10(平成22)年8月)
 
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