第III部 わが国の防衛に関する施策
5 衛生機能の強化
1 防衛医科大学校に4年制の看護師養成課程を新設

防衛省・自衛隊では、任務の多様化・国際化、医療技術の高度化・複雑化に十分に対応し得る専門的知識・能力と豊かな人間性や的確な判断力を有する質の高い看護師を養成する必要が高まっている。このため、防衛省・自衛隊の任務を適切に遂行できるより質の高い看護師を確保・育成することを目的として、14(同26)年4月に防衛医科大学校医学教育部に4年制の「看護学科(仮称)」を新設することとした。これを受けて、自衛隊中央病院高等看護学院(3年制)および防衛医科大学校高等看護学院(3年制)は16(同28)年3月末に廃止される。新設される看護学科においては、「保健師および看護師である幹部自衛官となるべき者の教育訓練」(以下「自衛官コース」という。)と「保健師及び看護師である技官となるべき者の教育訓練」(以下「技官コース」という。)の2つの課程を設け、自衛官コースは75人、技官コースは45人を定員とする。両コースとも保健師および看護師の資格を取得するための教育訓練を行うことは共通であるが、自衛官コースはそれに加え、幹部自衛官となるための教育訓練を実施する。看護学科卒業後1、自衛官コース修了者は、所要の教育訓練終了後、自衛隊の衛生部隊や自衛隊病院などで勤務することを予定しており、技官コース修了者は、高度な医療技術を必要とする防衛医科大学校病院で勤務することを予定している。

2 医官教育の強化

自衛隊衛生は、多様な任務を適時適切に遂行し得る、訓練された人的資源を十分に保有する必要がある。このため、自衛隊医官は、その階級、役職などに応じて、幹部自衛官たるにふさわしい見識と素養、衛生分野のリーダーとしての統率力を有するとともに、初期医療などを実施し得る総合臨床医としての能力及び集団としてバランスのとれた能力を発揮できるよう、各診療科における専門医としての専門能力及び指導能力を併せ持っていることが求められており、それらの資質及び専門技能の維持・向上に努めている。
しかし、現在、医官の充足率は低く、特に、国際平和協力活動などにおいて中核となるべき中堅層で低い状況にある。低充足の要因は、医官の離職であり、その主な理由の一つとしては、「医師としての研修・診療機会の不足」が挙げられる。
今後、防衛省・自衛隊としては、研修・診療機会を拡充し、医官の専門技能の修得、維持及び向上を図るとともに、モチベーションの向上、組織に対するロイヤリティーの向上を図ることにより離職を防止し、多様化する任務を適切に遂行し得る医官を養成するための各種施策を可能なものから速やかに講じることとしている。

3 自衛隊病院の拠点化・高機能化

自衛隊病院は各種事態対処時に隊員の後送病院としての役割を果たすとともに、平素は、隊員、家族などの診療ならびに医療従事者の技量の維持・向上および養成のための教育機関としての役割も果たすことが求められている。
そのため、「自衛隊病院等在り方検討委員会」が09(同21)年8月に報告書に取りまとめた検討成果(16病院を10病院に集約化し質の高い病院の整備など)を踏まえて、計画的に自衛隊病院を整備するとともに、自衛隊病院の拠点化・高機能化について、引き続き検討を行っている。


1)保健師および看護師の免許は、医師免許と同様に社会的有用性が高いこと、自衛隊病院等が適切に機能するために必要な看護師を確保する必要があることなどから、教育訓練の期間(4年)等を考慮し、卒後6年の勤続義務を課すこととし、勤続年限内に離職した者には償還金を課すこととしている。
 
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