第III部 わが国の防衛に関する施策
2 島嶼(とうしょ)防衛

四方を海で囲まれ、多くの島嶼を有するというわが国の地理的特性から、わが国に対する武力攻撃の形態の一つとして島嶼部に対する攻撃が想定される。

1 基本的考え方

島嶼部に対する攻撃への対応は、自衛隊による平素からの常時継続的な情報収集・警戒監視・偵察活動などにより、兆候を早期に察知することが重要である。この対応については、陸上の防衛のための作戦(1節9参照)との共通点が多い。事前に兆候を得た場合には、敵に先んじて攻撃が予想される地域に部隊を集中して、敵の攻撃の抑止を図る。敵があくまでもわが国を攻撃する場合、その攻撃を阻止するための作戦を行う。また、事前に兆候が得られず万一島嶼を占領された場合には、航空機や艦艇による対地射撃により敵を制圧した後、陸自部隊を着上陸させるなど島嶼を奪回するための作戦を行う。
参照 資料4243
こうした作戦を行う場合、陸・海・空自が一体となった統合運用が特に重要となる。統合運用によって部隊を迅速に展開・集中するとともに、平素から配置している部隊と協力して、敵の部隊などを阻止・排除する。その際、巡航ミサイル対処を含め、島嶼周辺における防空態勢を確立するとともに、周辺海空域における航空優勢1、制海および海上輸送路の安全を確保することが重要となる。
(図表III-1-1-6参照)

図表III-1-1-6 島嶼防衛のイメージ図
2 防衛省・自衛隊の取組

防衛省・自衛隊は、自衛隊配備の空白地域となっている南西地域の島嶼部について沿岸監視部隊の配置や初動を担任する部隊の新編に着手するなど、平素からの情報収集・警戒監視態勢や事態発生時の迅速な対処に必要な体制を整備してきている。
また、島嶼部への迅速な部隊の展開・対応能力を確保するため、輸送機、地対艦誘導弾などを整備するとともに、島嶼部に対する攻撃の抑止および対処のための訓練なども行っている。そのほか、南西地域などにおいて、陸・海・空自の統合運用能力の向上のための各種演習を行うとともに、実効的な作戦遂行能力や相互連携要領の確立のための米軍との実動訓練などにも取り組んでいる。12(同24)年8月にはグアム・テニアンにおいて、13(同25)年1月にはカリフォルニアにおいて陸自が米海兵隊との実動訓練を実施しており、同年6月にはカリフォルニアにおいて陸・海・空自が参加して米国における統合訓練(実動訓練)(ドーン・ブリッツ13)を実施することとしている。ドーン・ブリッツはこれまで米軍単独訓練として実施されており、自衛隊が参加するのは今回が初めてである。
さらに、戦闘機、地対空誘導弾の整備などによる防空能力向上のための取組、潜水艦、固定翼哨戒機などの対潜戦能力向上による海上交通の安全確保のための取組、水陸両用車や各種装甲車、ヘリコプターなどの輸送力・機動力向上のための取組などは、島嶼部攻撃への対応の観点からきわめて重要である。
参照 1節9

上陸訓練を行う陸自隊員
上陸訓練を行う陸自隊員
米軍との共同訓練においてオスプレイから降着後、前進する陸自隊員
米軍との共同訓練においてオスプレイから降着後、前進する陸自隊員
5インチ砲で訓練射撃を行う護衛艦
5インチ砲で訓練射撃を行う護衛艦

1)空において相手航空戦力より優勢であり、相手から大きな損害を受けることなく諸作戦を遂行できる状態
 
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