第II部 わが国の防衛政策と日米安保体制
2 「日米防衛協力のための指針」見直しへ向けた取組

第1節でも述べられている、現行のガイドラインは、冷戦の終結や北朝鮮危機、中台危機といった安全保障環境の変化を踏まえ、78(昭和53)年に策定された旧ガイドラインを見直す形で97(平成9)年に策定された。現行ガイドラインは、日米間の役割や協力のあり方を、<1>平素、<2>日本に対する武力攻撃、<3>周辺事態に区別して規定し、適時かつ適切に見直しを行うことが明示されている。
現行ガイドラインが策定されて以降、すでに15年以上が経過しており、わが国を取り巻く安全保障環境においては、周辺国の軍事活動などの活発化、国際テロ組織などの新たな脅威の発生、海洋・宇宙・サイバー空間といった国際公共財の安定的利用に対するリスクの顕在化など、様々な課題や不安定要因が顕在化・先鋭化・深刻化している。さらには、海賊対処活動、PKO、国際緊急援助活動のように自衛隊の活動もグローバルな規模に拡大してきている。そのため、日米防衛協力のあり方を、これらの安全保障環境の変化や、自衛隊の活動・任務の拡大に対応させる必要が生じてきている。
これら安全保障環境の変化を背景として、12(同24)年8月の日米防衛相会談においては、「1997年の日米防衛協力のための指針(ガイドライン)について、策定から10年以上経た今日までの安全保障環境の変化や日米防衛協力のあり方も踏まえ、今後、研究・議論していくことが重要であることにつき、認識が一致」したところであり、同年9月の日米防衛相会談でも、その認識を再度確認しつつ、さらに、日米間で必要な研究・議論を行っていくことで一致した。12(同24)年9月には、防衛省内に「日米防衛協力のための指針の研究に関するプロジェクト・チーム」を立ち上げ、検討を行っている。さらには、12(同24)年末に、「自衛隊の役割を強化し、抑止力を高めるため、日米防衛協力ガイドライン等の見直しを検討する」ことが安倍内閣総理大臣より小野寺防衛大臣に指示されている。また、13(同25)年2月の日米首脳会談においても、安全保障とアジア太平洋地域情勢についての意見交換がなされ、安倍内閣総理大臣からオバマ米大統領に対し「安全保障環境の変化を踏まえ、日米の役割・任務・能力(RMC)の考え方についての議論を通じ、ガイドラインの見直しの検討を進めたい」旨述べられた。
現在は、具体的な防衛協力の前提となる日米の役割・任務・能力(RMC)の考え方や戦略的な環境認識について、日米間の審議官級協議を含む、様々なレベルで議論を進めているところである。また、防衛大綱の見直しの議論や来年に策定される予定の米国のQDRの議論などと密接に関連してくることから、これらもふまえながら、引き続き日米間で精力的に議論を行っていく。

日米防衛相会談における森本防衛大臣(当時)とパネッタ米国防長官(当時)
日米防衛相会談における森本防衛大臣(当時)とパネッタ米国防長官(当時)
 
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