第I部 わが国を取り巻く安全保障環境
3 弾道ミサイルなど

弾道ミサイルは、重量物を遠距離に投射することが可能であり、核・生物・化学兵器などの大量破壊兵器の運搬手段としても使用されるものである。また、いったん発射されると弾道軌道を描いて飛翔し、高角度、高速で落下するなどの特徴を有しているため、有効に対処することは一般的に困難とされている。
武力紛争が続いている地域に弾道ミサイルが配備された場合、紛争を激化・拡大させる危険性が高く、また、軍事的対峙(たいじ)が継続している地域の緊張をさらに高め、地域の不安定化をもたらす危険性も有している。さらに弾道ミサイルは、通常戦力において優る国に対する遠距離からの攻撃や威嚇の手段としても利用される。
近年こうした弾道ミサイルの脅威に加え、テロリストなどの非国家主体にとっても入手が比較的容易で、拡散が危惧される兵器として、巡航ミサイルの脅威も指摘されている1。巡航ミサイルは、弾道ミサイルに比べ、製造コストが安く、維持、訓練も容易で、多くの国が製造または改造を行っている。一方で、命中精度が比較的高く、飛翔時の探知が困難とされている2。また、弾道ミサイルに比して小型であるため、船舶などに隠匿して、密かに攻撃対象に接近することが可能であり、弾頭に大量破壊兵器が搭載された場合は、深刻な脅威となる3


1)06(平成18)年7月のイスラエル・レバノン間の紛争において、ヒズボラがイスラエル海軍の艦船を攻撃する際、巡航ミサイルを使用したとされる。また、イスラエルは11(同23)年3月、臨検した貨物船から対艦巡航ミサイル6発などを発見した旨発表している。
2)米議会調査局「巡航ミサイルの拡散」(05(平成17)年7月28日)。
3)米国は、中国やイランなどによる弾道ミサイルや巡航ミサイルの開発・配備について、前方展開された米軍部隊を脅かすおそれがあるとして懸念している。
 
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