第III部 わが国の防衛に関する諸施策
3 技術研究本部での研究開発

技術研究本部では、部隊運用上の要求を見据えつつ、最新の科学技術を取り込んだ研究開発を行うため、新たな手法を取り入れている1。平成21年度から「運用実証型研究」として、部隊と各隊員間をネットワークにより情報共有できる、隊員の個人装備の研究試作を行っている。このシステム技術の研究にあたり、操作性の向上や軽量化などに関する使用者の意見を反映するため、部隊の協力や部隊実験2における成果の活用により実運用を想定した各種評価データを取得することとしている。
また、統合運用の観点から、戦力のネットワーク化による組織戦闘の実現を図るため、戦闘機搭載用の高機能デジタルデータリンクシステムの開発を行っている。
装備品のライフサイクルを通じた性能、スケジュール、コストの最適化を図る観点からは、構想・研究および開発段階において、性能・コストなどの面での複数の提案の比較・分析を徹底するとともに、そのツールとして、艦艇初期検討評価技術、統合防空システムシミュレーションなど「モデリング・アンド・シミュレーション」の研究を行っている。さらに、装備品の量産単価の上昇を招かないように、開発時から技術研究本部と装備施設本部が、コストの見積もりについて連携を図る仕組みを、ライフサイクル管理の一部として行っている。
技術研究本部は、国内諸機関との技術交流として、宇宙航空研究開発機構や大学などとの間で技術情報の交換などを行っている。今後は、国内外の技術動向の調査をさらに強化し、国内の機関、民間企業などが保有する技術を将来の装備品の研究開発へ活用することを一層推進する。また、「防衛装備品等の海外移転に関する基準」についての内閣官房長官談話を踏まえ、わが国と安全保障面での協力関係がある国との技術交流の推進を図る。このほか、東日本大震災の教訓も反映しつつ新除染セットの技術開発や無人機などの技術研究に取り組むとともに、情報通信技術やサイバー攻撃対処技術といった、民生分野で科学技術の進展が著しい各種の技術革新の成果を踏まえた装備品の技術研究開発の推進を図る。


1)<1>装備品の原型の試作などを行い、それを運用者と見込まれる各自衛隊の評価に供し、じ後の研究開発や調達などに反映していく「運用実証型研究」の導入、<2>開発着手時に最終的に達成すべき要求性能を設定せず、着手後においても、要求性能の精度を高めたり、最新の軍事科学技術を取り入れたりすることを可能とする「進化的開発」の導入
2)「情報の優越に基づく新たな戦い方」の具体化や指揮統制・通信装備などの効率的な整備を目的として、陸自が特定の部隊をもって行う実験
 
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