第III部 わが国の防衛に関する諸施策
第6節 軍備管理・軍縮・不拡散への取組

近年、大量破壊兵器やその運搬手段であるミサイルとこれらの関連機材・物資がテロリストや懸念国などに拡散する危険性が強く認識されている。このため、これらを規制し、輸出を厳格に管理するといった不拡散への取組が、今日の国際社会の平和と安定に差し迫った課題となっている。
また、人道上の観点から、特定の通常兵器の規制を求める国際世論なども高まりを見せている。このため、防衛上の必要性とのバランスを考慮しつつ、特定の通常兵器の規制問題に対応していくことが各国にとって重要な課題となっている。
これらの課題に対する取組として、各国の協力のもと、軍備管理・軍縮・不拡散にかかわる体制が整備されている。
(図表III―3―6―1参照)

図表III―3―6―1 通常兵器、大量破壊兵器、ミサイルおよび関連物資などの軍備管理・軍縮・不拡散体制

以上を踏まえ、わが国は、核兵器のない世界を目指した現実的・漸進的な核軍縮・不拡散への取組、また、その他の大量破壊兵器やその運搬手段であるミサイルなどに関する軍縮・不拡散、さらに特定の通常兵器の規制問題に関する国際的な取組に積極的な役割を果たしている。
本節では、国連を含む国際機関などが行う軍備管理・軍縮・不拡散にかかわる取組に対する防衛省・自衛隊の取組について説明する。

大量破壊兵器などの軍備管理・軍縮・不拡散関連条約などへの取組
1 核兵器

軍縮・不拡散体制の強化の観点から、わが国は包括的核実験禁止条約(CTBT:Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty)の早期発効に向けた努力や国際原子力機関(IAEA:International Atomic Energy Agency)保障措置の強化のための取組を続けているほか、核兵器不拡散条約(NPT:Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons)のより良い運用を検討するための各種会合や原子力供給国グループ(NSG:Nuclear Suppliers Group)における議論にも積極的に参画している。
参照 資料59

2 生物兵器・化学兵器

(1)化学兵器禁止条約(CWC:Chemical Weapons Convention )などへの取組
防衛省・自衛隊は、80(昭和55)年以降、CWCの交渉の場に、化学防護の専門家を随時派遣し、日本代表団の一員として条約案の作成に協力してきた。また、条約の発効にともない、条約の定める検証措置などを行うため、オランダのハーグに設立された化学兵器禁止機関(OPCW:Organization for the Prohibition of Chemical Weapons)に、97(平成9)年以降、化学防護の専門家を派遣しており、現在は、陸上自衛官1名を派遣している。
参照 資料6061

なお、陸自化学学校(さいたま市)では、条約の規制対象である化学物質を防護研究のために少量合成していることから、条約の規定に従い、同機関設立当初から計8回の査察を受け入れている。
また、中国遺棄化学兵器廃棄処理事業については、CWCに基づいて、政府全体として取り組んでいる。遺棄化学兵器は中国北部の黒龍江省から南部の広東省まで広範囲で存在が確認されており、吉林省敦化(とんか)市ハルバ嶺(れい)には、現在でも約30〜40万発にのぼる旧日本軍の化学兵器が埋設されているものと推定されている。防衛省・自衛隊は、CWCに基づく遺棄化学兵器処理を担当する内閣府に陸上自衛官を含む職員7名を出向させている。00(同12)年以降、計11回の発掘・回収事業に、化学、弾薬を専門とする陸上自衛官を内閣府に出向させた上、現地に派遣している。11(同23)年は、8月から9月にかけて、内閣府が行う中国吉林省敦化市蓮花泡(れんかほう)での発掘・回収事業に自衛官7名が参加し、中国側作業員に対して砲弾の識別、汚染の有無の確認、作業員の安全管理などについて指導を行った。

中国吉林省にて、遺棄化学兵器を発掘・調査する陸自隊員
中国吉林省にて、遺棄化学兵器を発掘・調査する陸自隊員

(2)生物兵器禁止条約(BWC:Biological Weapons Convention )への取組
BWCについては、関連会合に薬学や医学の専門家である医官、教官などを派遣し、BWC強化のための取組に対して協力を行っている。

(3)オーストラリア・グループ(AG:Australia Group)への取組
94(同6)年以降、毎年、会合に職員を派遣し、AGの規制や取り決めの実効性を高めるため協力している。

3 運搬手段(ミサイル)

防衛省は、92(同4)年以降、毎年、ミサイル技術管理レジーム(MTCR:Missile Technology Control Regime)の会合に職員を派遣し、MTCRの規制や 取り決めの実効性を高めるため協力している。

参照 資料62

 
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