第III部 わが国の防衛に関する諸施策
3 在日米軍の再編を促進するための取組

ロードマップに基づく在日米軍の再編を促進するため、07(平成19)年8月に「駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法」1(再編特措法)が施行された。その概要は次のとおりである。

1 再編交付金

再編交付金2は、再編を実施する前後の期間(原則10年間)において、再編が実施される地元市町村3の住民生活の利便性の向上や産業の振興に寄与する事業4の経費にあてるため、防衛大臣により再編関連特定防衛施設と再編関連特定周辺市町村を指定した後、在日米軍の再編に向けた措置の進み具合などに応じて交付される。
 再編特措法に基づき、07(同19)年10月に14防衛施設、33市町村が指定され、08(同20)年までに6市町村が追加指定され、現在39市町村が再編交付金の交付対象となっている。

2 公共事業に関する補助率の特例など

大規模な部隊の移駐により、市町村の中には道路や港湾の整備などの公共事業を速やかに実施しなければならない場合があり得るため、こうした事業に対する補助率の特例などを設けた。また、こうした事業が国や都道府県の事業として行われ、あるいは市町村の区域に限定されないことがあり、再編交付金では措置できない場合も考えられるため、特に負担の著しい市町村とその隣接市町村5からなる地域(再編関連振興特別地域)の振興を図るため、駐留軍等再編関連振興会議6の設置など特別の措置を定めた。
(図表III―2―3―8参照)

図表III―2―3―8公共事業に関する補助率の特例(事例)


3 株式会社国際協力銀行の業務に関する特例などの措置

海外での長期間にわたる民活事業を適切かつ安定的に行うためには、この分野に専門的な知見・経験を有する株式会社国際協力銀行7(国際協力銀行)の活用が必要である。このため、国際協力銀行の業務の特例として、駐留軍再編促進金融業務を追加し、在沖米海兵隊のグアム移転を促進するために必要な事業にかかる資金の出資、貸付けなどの業務を行うことができることとし、あわせてこうした業務に対する政府による財政上の措置の特例を定めたが、12(同24)年4月の「2+2」共同発表において、日本側の財政的コミットメントは直接的な資金の提供のみとされたことを踏まえ、当該措置の今後の取り扱いについて、検討することとしている。
参照 3節1

4 駐留軍等労働者に対する措置

再編の実施により施設・区域の返還や在沖米海兵隊のグアムへの移転などが行われ、駐留軍等労働者の雇用にも影響を及ぼす可能性があることから、雇用の継続に資するよう技能教育訓練などの措置を講ずる。

5 法律の期限

再編特措法は10年間の時限立法であるが、日本公庫の業務に関する特例などの措置については、この期限後も、当分の間、なお効力を有する。


1)<http://law.e-gov.go.jp/announce/H19HO067.html>参照
2)平成24年度予算で約93億円
3)再編特措法では、在日米軍の再編の対象である航空機部隊と一体として行動する艦船の部隊の編成の変更(横須賀海軍施設における空母の原子力空母への交替)について、在日米軍の再編と同様に扱う。
4)具体的な事業の範囲は、「駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法施行令」第2条において、教育、スポーツおよび文化の振興に関する事業など、14事業が規定されている。
5)隣接市町村については、自然的経済的社会的条件からみて、特に負担の著しい市町村と一体としてその振興を図る必要があると認められるものに限ることとしている。
6)議長は防衛大臣、議員は内閣官房長官、総務大臣、外務大臣、財務大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、環境大臣および特命担当大臣のうちから内閣総理大臣が指定する者で構成される。また、駐留軍等再編関連振興会議において審議し、決定された振興計画に基づく公共事業のうち、道路、港湾、漁港、水道、下水道、土地改良、義務教育施設の整備の7事業について、米軍再編による地域社会への影響の内容および程度を考慮して速やかに実施することが必要なものについては、国の負担または補助の割合を通常よりも高く設定する。
7)08(平成20)年10月1日に国際協力銀行は国民生活金融公庫などと統合され、株式会社日本政策金融公庫(日本公庫)となったが、国際協力銀行の機能強化および業務拡充のため、12(同24)年4月1日より日本公庫から分離した。これにともない、駐留軍再編促進金融業務は株式会社国際協力銀行に引き継がれた。
 
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