第III部 わが国の防衛に関する諸施策
4 動的防衛協力

前述の通り、同盟深化・拡大に向けた日米間の協議においては、変化する安全保障環境に対応するための取組として、日米の「動的防衛協力」に関する議論も行われてきたところであり、今後、その具体化が日米防衛協力を進める上で重要な課題となっている。
わが国周辺地域で多数の国が軍事力を近代化し、軍事的な活動を活発化させていることや、安全保障課題に対し、利益を共有する国々が平素から協力することが重要となっていることなど、今日の安全保障環境のすう勢を踏まえ、22大綱は、今後の防衛力について、「防衛力の存在」を重視した従来の「基盤的防衛力構想」によることなく、「防衛力の運用」に焦点を当て、「動的防衛力」を構築することとしている。
この動的防衛力の考えのもと、防衛省・自衛隊としては、事態が発生する前から行う情報収集・警戒監視などの平素の活動を常時・継続的・戦略的に実施すること、国内外における突発的な事態に迅速かつシームレスに(切れ目なく)対応すること、アジア太平洋地域などにおける二国間、多国間での国際協力を重層的に実施することを重視して、防衛力の運用を行っていくこととしている。
今後の日米防衛協力にあたっても、こうした動的防衛力の考え方を適用し、<1>様々な事態に対して、事態発生後に受動的に対応するのではなく能動的に対応し、また、平素から緊急事態に至るまで迅速かつシームレスに協力すること、<2>平素から日米の部隊の活動レベルを向上させ、日米の意思や能力を明示し、抑止力、プレゼンスを強化すること、<3>日米韓、日米豪などの三か国間の防衛協力や、多国間の枠組みの中での日米協力を含む重層的な防衛協力を推進すること、などを内容とする「動的防衛協力」を実現し、実効的な抑止と対処を確保するとともに、地域の安全保障環境の安定化を図ることが重要である。
このような考え方を前提として、日米両国間では、11(平成23)年6月の「2+2」共同発表において、共同訓練・演習の拡大、施設の共同使用の更なる検討、情報共有や共同の情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動の拡大といった協力を推進していくことに合意した。また、同年10月の日米防衛相会談においても、時宜を捉えた効果的な共同訓練や共同の警戒監視を行ったり、これらの活動の拠点の選択肢を増やすために両国施設の共同使用を進めたりすることなどにより、部隊の活動を活発化させ、両国のプレゼンスと能力を示していく、動的な日米防衛協力を進めていくことで一致している。
さらに、12(同24)年4月27日の「2+2」共同発表において、「動的防衛協力」が抑止力を強化することに留意し、地域における「動的防衛協力」を促進する新たな取組を探求する考えを明らかにしている。同年5月1日の日米首脳会談において、この「2+2」共同発表が同盟深化に向けた重要な前進として高く評価され、特に「動的防衛協力」は二国間の運用面での協力を強化する同盟の新たなイニシアティブへの道を開くものであるとされ、今後、日米間で着実に実施していくことが首脳間においても合意されている。
このように日米両政府は、「動的防衛協力」の具体策の一つとして、共同訓練及び共同の警戒監視活動等の拡大と、それらの活動の拠点となる両国の施設の共同使用の拡大を検討している。
共同訓練の拡大は、平素からの共同活動を増大し、部隊の即応性、運用能力及び日米の相互運用性の向上をもたらす。また、効果的な時期、場所、規模で共同訓練を実施することは、日米間での一致した意思や能力を示すことにもなり、抑止の機能を果たすことになる。
共同の警戒監視活動等の拡大は、共同訓練の拡大と同様に、他国に対する情報優越を確保するのみならず、抑止の機能を果たすことになる。また、共同使用の拡大は演習場、港湾、飛行場等自衛隊の拠点の増加を意味し、日米共同の訓練の多様性・効率性を高め、警戒監視活動等の範囲や活動量を増やすこととなる。さらに、在日米軍の専用施設・区域を自衛隊が共同使用することで、地元負担の軽減につながるという効果も期待できる。
このように共同使用・共同訓練・共同の警戒監視活動等の3つの取組の相乗効果によって、日米の部隊運用の効率性、相互運用性・即応性・機動性・持続性などの一層の強化・向上が実現できる。
日米両国は引き続き、変化する安全保障環境への対応やグアムの戦略的重要性、南西諸島防衛、在日米軍基地を抱える地元負担の軽減といった観点も考慮しつつ、「動的防衛協力」の具体策を検討している。特に、グアムおよび北マリアナ諸島連邦における訓練場の整備について日米間での具体的な協力のあり方を12(同24)年末までに検討することとしている。

 
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