第III部 わが国の防衛に関する諸施策
3 在日米軍再編の調整に関する協議

1 協議の経緯

在日米軍再編については、11(平成23)年末から12(同24)年初めにかけて普天間飛行場の代替の施設にかかる環境影響評価書を沖縄県に送付するなどの作業を進める一方、米国との間でも様々なレベルで協議を続けてきたところであるが、その中では、普天間飛行場の移設及び在沖海兵隊のグアム移転が共に進むような方策についても、12(同24)年1月13日に就任した田中防衛大臣(当時)がパネッタ長官と意見交換を行うなど、協議を行ってきた。このような協議を経て、日米両政府は、
<1> 沖縄の目に見える負担軽減を早期かつ着実に図る方策を講ずる必要があること、
<2> 12(同24)年1月に公表された米国の国防戦略指針にも示されているアジア太平洋地域重視の戦略と米軍再編計画の調整を図る必要があること、
<3> 米国議会においては、グアム移転に係る経費を削減することが求められていること、
などの要因を踏まえ、日米双方で在日米軍再編計画の調整に係る本格的な協議を行うこととした。このため、12(同24)年2月8日に共同報道発表により、在沖海兵隊のグアム移転と嘉手納以南の土地の返還の双方を普天間飛行場の移設から切り離す公式な協議の開始、グアムへ移転する海兵隊の部隊構成および人数についての見直しなどに関する協議の方向性を文書として示した。
その後、日米の防衛・外務当局間においては、田中防衛大臣(当時)が、パネッタ国防長官やルース駐日米大使と意見交換を行ったほか、審議官級協議を累次にわたって行うなど様々な機会をとらえて精力的に議論を行ってきたが、この結果、日米両政府として米軍再編計画の調整について合意することができたため、12(同24)年4月27日、「2+2」共同発表を公表するに至った。

「2+2」共同発表

今回の「2+2」共同発表は、11(同23)年6月の「2+2」共同発表以降の在日米軍再編計画に関する重要な進展や、ますます不確実となっているアジア太平洋地域の安全保障環境などにかんがみ、06(同18)年のロードマップで示された計画の調整を決定するものである。
今回の再編計画の調整の背景としては、まず、米国がアジア太平洋地域において、近年の安全保障環境の変化を受け、地理的により分散し、運用面でより強靱(きょうじん)であり、政治的により持続可能な態勢を達成するべく、海兵隊の部隊構成の見直しを行っていることが挙げられる。これは、米国がアジア太平洋地域を重視し、同地域における安定的なプレゼンスを確保するため、北東アジアにおける大規模な事態にも対処し得る態勢をとるとともに、地域全体の多様な事態に実効的に対処できる効率的な態勢を構築することを図るためのものである。その基本的な考え方に基づき、ロードマップにおいて沖縄に所在する第3海兵機動展開部隊(IIIMEF)のうち指揮部隊など主として司令部要素をグアムへ移転し、陸上・航空・後方支援部隊といった要素は沖縄に残すこととしていた部隊構成を変更し、沖縄における米軍のプレゼンスを引き続き確保しつつ、地理的に分散された部隊態勢を確立するために、司令部・陸上・航空・後方支援の各要素から構成される海兵空地任務部隊(MAGTF)を日本、グアム、ハワイに置くとともにオーストラリアへローテーション展開させることとした。これにより、部隊配置の縦深性を増しつつ、高い即応性を有する各々のMAGTFを相互に連携して機動的に運用する態勢を構築することによって、アジア太平洋地域において、多様な事態により柔軟かつ迅速に対応し得る米軍の態勢が構築される。

今回の共同発表は、このような新たな部隊構成を基に、日米同盟の抑止力の維持と沖縄の負担軽減が両立するよう具体的な再編計画の調整を行っており、その概要は次の通りである。

<1> 前文
(1) 06年5月の「再編のロードマップ」に定められた計画の調整を決定。
(2) 海兵隊の沖縄からグアムへの移転及びその結果として生ずる嘉手納以南の土地の返還の双方を、普天間飛行場の代替施設に関する進展から切り離すことを決定。
(3) 米海兵隊の新しい態勢に加え、日本の防衛態勢の強化及び日米間の動的防衛協力の推進により、日米同盟全体の抑止力が強化される旨確認。

<2> グアムと沖縄における部隊構成(人数は定員)
(1) 米国は、海兵空地任務部隊(MAGTF)を沖縄、グアム、ハワイに置くとともに、豪州へのローテーション展開を構築。
(2) 約9,000人の海兵隊員がその家族と共に沖縄から日本国外に移転。
(3) 沖縄における海兵隊の最終的なプレゼンスは「再編ロードマップ」の水準に従ったものとする。
(4) グアムにおける海兵隊は約5,000人となる。
(5) 海兵隊のグアム移転に係る米国政府による暫定的な費用見積りは、86億ドル(2012米会計年度ドル)。日本側の財政的コミットメントは、2009年のグアム協定第1条に規定された28億ドル(2008米会計年度ドル)の額を限度とする直接的な資金提供となる。他の形態での財政支援(出融資等)は利用しない。次項<3>(2)の協力で貢献する場合もこのコミットメントの内数。

<3> 地域の平和、安定及び繁栄を促進するための新たなイニシアティブ
(1) アジア太平洋地域の平和、安定及び繁栄を促進する重要性を確認。日本政府はODAの戦略的な活用(例:沿岸国への巡視船の提供等)を含む様々な措置をとる。
(2) 日米両政府は、グアム及び北マリアナ諸島連邦において日米が共同使用する訓練場の整備に向けた協力を検討し、2012年末までに協力分野を特定。

<4> 沖縄における土地返還
(1) 1.手続後の速やかな返還が可能な区域
:キャンプ瑞慶覧の一部(西普天間住宅地区、及び施設技術部地区内の倉庫地区の一部)、牧港補給地区の一部(北側進入路、第5ゲート付近)
 2.県内移設後に返還が可能な区域
 :牧港補給地区の一部(倉庫地区の大半を含む)、キャンプ瑞慶覧の一部(インダストリアル・コリドー等)、キャンプ桑江、那覇港湾施設、陸軍貯油施設第1桑江タンク・ファーム
 3.海兵隊の国外移転後に返還が可能な区域
 :キャンプ瑞慶覧の一部、牧港補給地区の残余
(2) 沖縄に残る施設・区域の統合計画を日米が共同で2012年末までに作成。

<5> 普天間代替施設と普天間飛行場
(1) 現行の移設案が唯一の有効な解決策であることを再確認。
(2) 代替施設が完全に運用可能となるまでの間、普天間飛行場を安全に運用し、環境を保全するために必要となる補修事業について、日米が相互に貢献。

参照 資料45

 
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