第III部 わが国の防衛に関する諸施策
2 同盟深化・拡大に向けた日米合意

以上のように、これまで多くの成果を生んできた日米間の協力関係は10(平成22)年、日米安保条約締結50周年を迎えた。これに先立つ09(同21)年11月13日の日米首脳会談1において、日米安保条約締結50周年に向けて、日米同盟深化のための協議プロセス(同盟深化のプロセス)の開始が合意された。(10(同22)年1月19日の日米安保条約署名50周年当日には、日米両首脳の談話と声明が発表されるとともに、「2+2」の共同発表が発出されている)。
こうして日米両国は日米同盟をさらに揺るぎないものとするため、今後、幅広い分野における日米安保協力をさらに推進し、深化するための対話を強化することとし、10(同22)年11月13日の日米首脳会談2で日米同盟を安全保障、経済、文化・人材交流の三本柱を中心に、深化・発展させることとしたほか、同年5月28日の「2+2」共同発表や11(同23)年1月13日の日米防衛相会談などの閣僚レベルでも日米同盟の深化に関するコミットメントが繰り返し示され、また閣僚の指示のもと事務レベルにおいても、日米間で具体的な協議が進められてきた。
参照 資料4243

1 「2+2」会合(11(平成23)年6月21日)

このような政治リーダーシップのもとで、同盟深化にかかる日米協議をあらゆるレベルで行ってきた結果、11(同23)年6月21日、ワシントンDCにおいて、07(同19)年以来4年ぶりとなる「2+2」会合を開催し、本協議プロセスの安全保障・防衛面での成果を確認した。

<1> この際公表された「2+2」共同発表においては、変化する安全保障環境に関する評価に基づき、北朝鮮による挑発の抑止、中国の責任ある建設的な役割などの促進や軍事上の近代化及び活動に関する開放性・透明性の向上、豪州及び韓国との間での三カ国間の安全保障及び防衛協力の強化、地域の安全保障環境を不安定化しうる軍事力の追求・獲得をしないことの促進、航行の自由の原則の確保を含む海洋における安全保障の維持、宇宙およびサイバー空間の保護ならびにそれらへのアクセスに関する日米の協力の維持など、05(同17)年および07(同19)年の「2+2」共同発表において定めた共通の戦略目標の見直しおよび再確認を行った。

<2> また、日米間の安全保障・防衛協力の深化・拡大については、同共同発表では、以下のようなものを含む幅広い内容に言及している。
○ 共同訓練・演習の拡大、施設の共同使用の更なる検討、情報共有や共同の情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動の拡大といった協力の促進
○ SM―3ブロックIIAの第三国移転が認められ得る基準や協議機関の指定
○ 宇宙における安全保障に関するパートナーシップの深化、サイバー・セキュリティに関する二国間の戦略的政策協議の歓迎など
○ 災害救援、平和維持、復興およびテロ対策を含む国際的な活動における更なる協力
○ 情報保全制度の更なる改善の重要性の強調
○ 運用面での協力について、より効果的で、顕在化しつつある安全保障上の課題により適合したものとし、様々な事態により良く対応することができるよう二国間の枠組を継続的に検討、強化

<3> 更に、米軍再編については、同共同発表では、普天間飛行場の代替の施設の位置、配置および工法の検証・確認を完了し、在沖海兵隊のグアムへの移転にかかるコミットメントを再確認、普天間飛行場の代替の施設および海兵隊の移転の従前の目標時期を改め、2014年より後のできる限り早い時期に完了させるとのコミットメントを確認するなど、06(同18)年の「再編の実施のための日米ロードマップ」(ロードマップ)を補完し、着実な実施を確認した。

<4> 併せて、同共同発表では、東日本大震災および原発事故における自衛隊と米軍との連携・協力を踏まえ、日米の多様な事態へ対処する能力強化を図ることで一致するとともに、在日米軍駐留経費負担の日米合意も確認した。
参照 資料44

2 日米防衛相会談

11(同23)年6月の「2+2」会合以降、この際公表された共同発表の内容を実現すべく、防衛省としても米国防省等との間で事務レベルの協議を続けていたところであるが、同年10月25日、パネッタ米国防長官が訪日し、防衛省において一川防衛大臣(当時)との間で会談を行い、両国間の安全保障・防衛協力や在日米軍の再編について幅広く意見交換を行った。
会談では、まず、一川防衛大臣(当時)から、東日本大震災における米国からの協力に謝意を表するとともに、日米同盟は、わが国のみならずアジア太平洋地域の平和と安定に不可欠な基礎をなすものであり、同盟に基づく日米間の緊密な協力関係は、世界における多くの安全保障上の困難な課題に効果的に対処する上で重要な役割を果たしている旨述べた。パネッタ長官からは、米国防予算をめぐる厳しい情勢にもかかわらず、米国はアジア太平洋地域におけるプレゼンスを維持し、更に強化していく旨発言があった。
日米両国間の安全保障・防衛協力については、一川防衛大臣(当時)とパネッタ長官は、情報保全や宇宙、サイバー、BMDなどの協力などについて意見交換を行うとともに、地域における軍事活動の拡大などますます不確実になっている安全保障環境を踏まえ、時宜を捉えた効果的な共同訓練や共同の警戒監視を行ったり、これらの活動の拠点の選択肢を増やすために両国施設の共同使用を進めたりすることなどにより、部隊の活動を活発化させ、両国のプレゼンスと能力を示していく、日米の「動的防衛協力」を進めていくことで一致した。
在日米軍再編については、一川防衛大臣(当時)とパネッタ長官は、日米合意に基づいて、沖縄の理解も得ながら、普天間飛行場の危険性を早期に除去し、同飛行場の移設・返還を可能な限り早く進めていくことで一致した。また、在沖海兵隊のグアム移転については、一川防衛大臣(当時)から、米側においても所要の予算を確保するとともに、各種移転事業を速やかにかつ継続的に実施されるよう協力を求めた。これに対して、パネッタ長官からは、グアム移転事業を進めるためには、普天間飛行場の代替の施設の完成に向けた具体的な進展を得ることが重要であるが、両国で互いに協力していきたい旨発言があった。


1)<http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/visit/president_0911/index.html>参照
2)<http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/visit/president_1011/index.html>参照
 
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