第II部 わが国の防衛政策の基本と動的防衛力
4 次期戦闘機に求められる性能など
1 高度の性能

わが国周辺地域において軍事力の近代化が進む中、戦闘機とその支援機能が一体となって機能する総合的防空能力の向上がますます重要となっていることは前述のとおりであるが、より具体的には、
○ ステルス性1や状況認識能力(SA)2といった点に優れた高性能戦闘機の出現
○ ステルス性に優れた巡航ミサイルの更なる増加
○ 戦闘機、空中警戒管制機(AWACS:Airborne Warning and Control System)、空中給油機、対空ミサイル(SAM:Surface to Air Missile)などが一体となって行われるネットワーク型戦闘の進展
といった状況に対処することのできる防空などの体制を整備することが喫緊の課題となっている。すなわち、次期戦闘機は、高性能戦闘機に有効に対処し得るとともに、十分な巡航ミサイル対処能力も備え、また、それらを構成要素とするネットワーク型戦闘においても実効的に任務を遂行できるものでなければならない。
また、兵器システムの高性能化および高価格化が進む現在、費用対効果の観点からも、各兵器システムのマルチロール(多機能)化が進展しているが、特に、戦闘機の分野においてその傾向は顕著である。さらに、わが国を取り巻く安全保障課題や不安定要因が多様で複雑かつ重層的なものであることなども踏まえれば、次期戦闘機については、制空戦闘能力に加え、少なくとも航空阻止3能力(空対地攻撃能力など)を備えたマルチロール(多機能)機であることが求められる。

2 効率的で安定した後方支援態勢

戦闘機部隊がその役割を実効的に果たすためには、各戦闘機が高い性能を有することに加え、部隊として、高い可動率により安定的に運用可能であることが極めて重要である。一方、戦闘機の維持・運用に係る経費は増加する傾向にあり、この傾向がさらに加速する場合、現在の厳しい財政事情にかんがみれば、個々の戦闘機の性能が高くとも、維持・運用に必要な部品などを調達できず、部隊として必要とされるレベルの可動率を維持できなくなり、ひいては、戦闘機部隊として期待される任務を十全に果たせないという事態が生起する可能性も否定できない。
したがって、次期戦闘機の導入に当たっては、信頼性および整備性に優れ、かつ、整備、補給、技術支援の全てにおいて効率的で安定した後方支援態勢を合理的なコストで確立することが可能な機種を選定することが不可欠である。

3 国内企業参画の確保

09(平成21)年12月に「戦闘機の生産技術基盤の在り方に関する懇談会」が公表した中間とりまとめ4で示したとおり、空自が運用する戦闘機について、将来にわたり、安全性を確保しつつ、高い可動率を維持し、わが国の運用に適した能力向上などを行っていくためには、防衛生産・技術基盤の維持・育成が重要であり、次期戦闘機についても、その製造・修理などへの国内企業の参画が確保され、国内企業による維持・運用にかかる適時適切なサポートが可能となるものでなければならない。

4 ライフサイクルコストへの考慮

航空機の機体そのものの取得経費(機体単価×取得予定数)だけでなく、その数倍に及ぶ可能性のある導入後の維持・運用にかかる経費を含めたライフサイクルコストについて考慮する必要があることは、前述のとおりである。


1)敵のセンサーによる自機の探知を防止するための技術またはその効果の総称
2)各種センサー(自機に搭載されたもの以外のものも含む)からの情報を融合して一つのディスプレイに表示するなどし、パイロットの戦況把握の促進や負担の軽減などを実現する技術やその効果の総称
3) 主として戦闘機により、洋上においては艦船攻撃を行って侵攻兵力を撃破(洋上撃破)し、また、着上陸した部隊に対しては敵の後方連絡線、資材集積所、交通要路などに対する航空攻撃を行い、侵攻部隊の作戦遂行能力の減殺を図る作戦をいう。
4) III部4章2節1参照
 
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