第II部 わが国の防衛政策の基本と動的防衛力
2 アジア太平洋地域の情勢−協力関係の深化と不透明・不確実な要素

相互依存関係が拡大・深化する中、安全保障課題の解決のため、国家間の協力関係の充実・強化が図られており、特に非伝統的安全保障分野を中心に、問題解決に向けた具体的な協力が進展しつつある。
一方、中国、インド、ロシアの国力の増大がもたらすグローバルなパワーバランスの変化は、この地域において顕著に表れている。わが国周辺地域には、依然として核戦力を含む大規模な軍事力が集中しており、多数の国が軍事力を近代化し、軍や関係機関による活動を活発化させている。また、領土や海洋をめぐる問題や、朝鮮半島や台湾海峡などをめぐる問題が存在するなど、不透明・不確実な要素が残されている。
北朝鮮は、大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発、配備、拡散などを継続するとともに、大規模な特殊部隊を保持しているほか、朝鮮半島において軍事的な挑発行動を繰り返している。このような軍事的な動きは、わが国を含む地域の安全保障における喫緊かつ重大な不安定要因であるとともに、国際的な拡散防止の努力に対する深刻な課題となっている。大国として成長を続ける中国は、世界と地域のために重要な役割を果たしつつある。一方で、中国は国防費を継続的に増加し、核・ミサイル戦力や海・空軍を中心とした軍事力の広範かつ急速な近代化を進め、戦力を遠方に投射する能力の強化に取り組んでいるほか、周辺海域において活動を拡大・活発化させており、このような動向は、中国の軍事や安全保障に関する透明性の不足とあいまって、地域・国際社会の懸念事項となっている。ロシアについては、極東地域における軍事力の規模を冷戦終結以降大幅に縮減しているものの、軍事活動は引き続き活発化の傾向にある。
このような中で、米国は、日本、韓国、オーストラリアなどの同盟国およびパートナー国との協力を一層重視して、二国間・多国間の枠組を活用した安全保障関係の強化を図るなど、この地域への関与を強めている。このような取組は、アジア太平洋地域の平和と安定に重要な役割を果たすとともに、米国がグローバルな安全保障課題に取り組むための基盤ともなっている。

 
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