第II部 わが国の防衛政策の基本と動的防衛力
第2章 防衛大綱

「防衛計画の大綱」は、安全保障の基本方針、防衛力の意義や役割、さらには、これらに基づく、自衛隊の具体的な体制、主要装備の整備目標の水準といった今後の防衛力の基本的指針を示すものである。
防衛計画の大綱は、「昭和52年度以降に係る防衛計画の大綱」(51大綱)、「平成8年度以降に係る防衛計画の大綱」(07大綱)、「平成17年度以降に係る防衛計画の大綱」(16大綱)、10(平成22)年12月に策定された「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」(22大綱)と4度にわたり策定されている。
本章では、22大綱の策定の背景およびその内容について説明する。

参照 資料7

第1節 22大綱策定の背景

22大綱の策定にあたって考慮した事項は、次のとおりである。

1 国際情勢全般−課題の複雑化と軍事力の役割の一層の多様化

国家間の相互依存関係はますます進展し、主要国間の大規模戦争の蓋然性が低下する一方、一国で生じた混乱や安全保障上の問題の影響が直ちに世界に波及するリスクの高まりが顕著となりつつある。そのような中、地域紛争に加え、領土や主権、経済権益などをめぐって、武力紛争には至らないような、いわばグレーゾーンでの対立が増加する傾向にある。また、中国・インド・ロシアなどの国力の増大ともあいまって、米国の影響力が相対的に変化しつつあり、グローバルなパワーバランスにも変化が生じている。
大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散、国際テロ組織、海賊行為などへの対応は引き続き差し迫った課題であるが、これに加え、地域紛争や、統治機構が弱体化または破綻した国家の存在も、グローバルな安全保障環境に影響を与え得る課題である。また、海洋、宇宙、サイバー空間の安定的利用に対するリスクが新たな課題となってきているほか、長期的には、気候変動の問題が安全保障環境にもたらす影響にも留意することが必要である。
こうしたグローバルな安全保障課題は、複数の問題(国際テロ、統治機構の弱体化など)が複雑に絡み合いながら、国境を超えた安全保障問題に発展する傾向が強く、一国のみで対応することは極めて困難であり、利益を共有する国々が平素から協力して取り組むことが重要となっている。
このような状況の中で、国際社会における軍事力の役割は一層多様化しており、武力紛争の抑止・対処、国家間の信頼醸成・友好関係の増進のほか、紛争の予防から復興支援などの平和構築、さらには人道支援・災害救援、海賊対処などの非伝統的安全保障分野において、非軍事部門とも連携・協力しつつ、軍事力が重要な役割を果たす機会が増加している。

 
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