イエメンでは、近年、外交団などに対する累次のテロ事件が発生してきている。また、10(平成22)年10月には、米国向けの複数の航空貨物から爆発物が発見され、これらの貨物がイエメンから発送されたものであることが判明した。こうした事件はアルカイダ関連組織が実行したものとみられており、11(同23)年2月以降の反政府デモ発生にともなう政情不安が、今後、「アラビア半島のアルカイダ(AQAP:Al-Qaeda in the Arabian Peninsula)」による更なる攻撃の計画・実行を許す可能性があるとの指摘がある1。
ソマリアでは、05(同17)年に暫定連邦「政府」が樹立した後も、全土を実効的に支配する政府が存在しない状態が続き、イスラム過激派組織「アル・シャバーブ」と政府軍の戦闘が継続している。アル・シャバーブは、アルカイダとの関連性が疑われている2。また、アル・シャバーブは、10(同22)年7月、ウガンダで起きた連続爆破テロ事件に関する犯行声明を出している。
アルジェリアでは、07(同19)年、政府や軍を標的とするテロが相次いで発生しており、「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM:Al-Qaeda in the Islamic Maghreb)」3がこれらのテロに関して犯行声明を出した。AQIMの分派は、近年、アルジェリアのみならず、サハラ以南(マリ、ニジェール、モーリタニア)においても活動しているとの指摘がある。同組織はこれまで主に欧米人を標的としており、08(同20)年以降、同組織によるとみられる欧米人などの誘拐事件が発生している4。
南アジアは、以前からテロが頻発している地域であり、インドでは、08(同20)年11月のムンバイ連続テロにおいて、日本人を含め外国人にも多数の犠牲者を出したほか、東部を中心にナクサライトと呼ばれる過激派組織が活動し、治安上の脅威となっている5。また、パキスタンにおいても、「パキスタンのタリバーン(TTP:Tahrik-e Taliban Pakistan)」6やアルカイダなどによる宗教施設や政府機関などを標的としたテロが多発している。
東南アジアは依然として、イスラム過激派などによるテロの脅威が存在している地域であるが、テロ組織の取締りなどに一定の進捗が見られる。インドネシアでは、10(同22)年2月にスマトラ島北部アチェ特別州のテロリスト訓練キャンプが摘発され、関係者120人以上が拘束されるなど、テロリストに対する取締りの面で一定の成果が見られる。フィリピンでも、国内治安上の最大の懸案となってきた、共産主義勢力である新人民軍(NPA:New People's Army)やイスラム過激派組織「アブ・サヤフ・グループ(ASG:Abu Sayyaf Group)」などのテロ組織は衰退していると指摘されている7。
(図表I―2―3―1参照)
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