01(平成13)年の9.11テロは、国際テロの脅威を全世界に改めて認識させ、米国をはじめとする各国によるテロとの闘いが始まる契機となった。
テロ発生直後に開始された米英軍主導のアフガニスタン攻撃などにより、9.11テロを主導したとされるアルカイダやそれを匿ったタリバーンは、指導部の多くが殺害または拘束された。11(同23)年5月には、パキスタンに潜伏していたアルカイダの指導者ウサマ・ビン・ラーディンが、米国の作戦により殺害された。しかしながら、同人の死亡によりアルカイダによる攻撃の可能性が根絶されたわけではなく、アルカイダの残党やタリバーンが潜伏しているとみられるアフガニスタン・パキスタン国境地域などでは、米国主導の多国籍軍、アフガニスタン国軍およびパキスタン軍などによる掃討作戦が続いている1。
相次ぐ幹部の殺害や拘束により、アルカイダの中枢は弱体化しているが、関連組織との関係を維持し、より小規模で簡易な攻撃を目指す可能性があるとの指摘がある2。また、アルカイダ指導部の指揮統制力が衰退する一方、その関連組織が勢力を増大させているとの指摘もある3。
「アルカイダ」を名称の一部に取り入れた関連組織は、主に北アフリカや中東を拠点としてテロを実行しているが4、これら関連組織が拠点以外の国でテロを実行する意図や能力は、組織ごとに大きく異なっているとされる5。
また、近年、アルカイダやその関連組織との正式な関係はないものの、アルカイダの思想に影響された急進的な個人やグループがテロ実行主体となる例が見られる6。特に、05(同17)年に発生したロンドン地下鉄等同時多発テロ以降、いわゆる「ホームグローン・テロリスト」7による脅威が懸念されている。たとえば、米国においては、09(同21)年5月から11(同23)年10月までの期間に、32人の「ホームグローン・テロリスト」が起訴されたとされる8。そのような個人を暴力に駆り立てる要因としては、共通の動機を見出すことは困難であるものの、海外の紛争地域への過激主義的な見地からの関心、米国での生活への失望感、欧米の対外政策への怒り、英語による過激主義的なプロパガンダの増加などがあると指摘されている9。
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