近年のIT革命により、インターネットなどの情報通信ネットワークは人々の生活のあらゆる側面において必要不可欠なものになりつつある。一方、情報通信ネットワーク、特に生活インフラの情報通信ネットワークに対するサイバー攻撃は人々の生活に深刻な影響をもたらしうるものであり、サイバーセキュリティは各国にとっての安全保障上の重要な課題の一つとなっている。
サイバー攻撃の種類としては、情報通信ネットワークへの不正アクセスによる情報の改ざんや窃取、大量のデータの同時送信による情報通信ネットワークの機能阻害などがあげられるが、インターネット関連技術は日進月歩であり、サイバー攻撃も日に日に高度化、複雑化している。サイバー攻撃の特徴としては、以下のようなものがあげられる。
<1>物理的に人や物を損傷することなく、また実際に接触することなく攻撃を行うことができる。
<2>重要な情報通信ネットワークに障害を発生させることができれば、甚大な被害を与えることができる。
<3>地理的・時間的な制約がないことから、いつでもどこからでも攻撃を行うことができる。
<4>攻撃主体自らの関与が特定されないように、コンピュータ・ウィルスによって乗っ取った無数のコンピュータを経由するなどの各種の手段をとることから、直接的な根拠をもとに攻撃主体を特定することが困難である。
軍隊にとって情報通信は、指揮中枢から末端部隊に至る指揮統制のための基盤であり、IT革命によって情報通信ネットワークへの軍隊の依存度が一層増大している。このような情報通信ネットワークへの軍隊の依存を受け、サイバー攻撃は敵の軍隊の弱点につけこんで敵の強みを低減できる非対称的な戦略として位置づけられつつあり、多くの外国軍隊がサイバー空間における攻撃能力を開発しているとされている1。また、情報収集目的のために他国の情報通信ネットワークへの侵入が行われているとの指摘がある2。
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