第I部 わが国を取り巻く安全保障環境
第4節 ロシア
1 全般

ロシアは、90年代を通じて失われた社会・経済発展の水準を取り戻したとし、引き続き国際社会における多極化を志向しつつ、世界で影響力のある国家として国益を追求していこうとしている。
ロシアは、これまで、天然資源依存型経済から脱却し、民主的政治制度を定着させ、また、汚職を撲滅するなど全面的な近代化が必要であると認識し1、メドヴェージェフ大統領(当時)およびプーチン首相(当時)のもとでこのような課題に取り組んできた。
こうした中、11(平成23)年9月、00(同12)年から08(同20)年の間、2期8年にわたり大統領を務めたプーチン首相(当時)が再び大統領選挙への立候補を表明したが2、11(同23)年12月に行われた下院選挙では、与党「統一ロシア」は過半数は確保したものの議席を大幅に減らしたほか3、各地で、選挙の不正に抗議し、また、同首相の退陣を求めるデモが行われるなど、新政権を取り巻く環境は必ずしも楽観的なものではないとみられている4
このような中、12(同24)年3月の大統領選挙に当選し、同年5月に就任したプーチン大統領、首相に任命されたメドヴェージェフ前大統領とも、引き続き、近代化にかかわる諸課題への取組みが必要と認識しており5、今後、新政権がいかに国内の支持基盤を固め、また、いかなる政治手法を用いてこうした課題に対応していくのかが注目される。


1)メドヴェージェフ大統領(当時)による年次教書演説(09(平成21)年11月)
2)11(平成23)年9月、与党「統一ロシア」党大会でメドヴェージェフ大統領(当時)はプーチン首相(当時)を大統領候補に推薦し、プーチン首相 (当時)はこれを受諾した。また、プーチン首相(当時)も下院選での「統一ロシア」の勝利を条件に、大統領選勝利後、メドヴェージェフ大統 領(当時)を首相に推すと表明した。「統一ロシア」は同年11月の党大会でプーチン首相(当時)を正式に大統領候補として擁立した。
3)「統一ロシア」の獲得議席数は、ロシア下院全議席(450議席)中、約53%に当たる238議席にとどまり、前回選挙(07(平成19)年)の315議席を大きく下回った。
4) 全ロシア世論調査センターによれば、12(平成24)年2月3日現在のプーチン首相(当時)の大統領候補としての支持率は52%
5)プーチン首相(当時)は、12(平成24)年1月以降に発表した選挙綱領的論文の中で自らの政策として、国民の政治参加の拡大や汚職防止、エ ネルギー資源に依存した経済を脱却して国内産業の強化を図り、経済の近代化を進めていくこと、中産階級が社会の主導役となるべきこと などを挙げ、また、11(同23)年11月の「統一ロシア」党大会で、国益を主張する対外政策を進め、軍事力を新たな水準へ向上させると述べた。 メドヴェージェフ大統領(当時)は11(同23)年12月の年次教書演説で今後の政権の課題として、政治の近代化、汚職の防止、軍の抜本的な刷 新、国家安全保障を踏まえた外交政策の推進を挙げた。
 
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