特集 東日本大震災への対応 

5 各国軍からの支援

1 米国
(1)全般
米軍は、東日本大震災を受けた人道支援・災害救援活動を「トモダチ作戦」と命名し、最大時で人員約16,000名、艦船約15隻、航空機約140機を投入するなど大規模な兵力で、捜索救助、物資輸送、仙台空港の復旧、新学期を前にした学校の清掃、気仙沼大島における瓦礫除去作業、さらには、日米共同での行方不明者の集中捜索など、被災地を中心に大規模な支援活動を実施した。
また、福島第一原発事故については、各種情報の提供や防護服、消防ポンプ、バージ船などの支援のほか、核などに関する検知、識別、除染、医療支援を任務とする海兵隊放射線等対処専門部隊(CBIRF:Chemical Biological Incident Response Force)約150名を4月2日から5月4日の間派遣した。その間、同部隊は4月9日には横田基地において陸自部隊と合同で訓練展示を、4月16日には郡山駐屯地、福島県立医大を視察、意見交換を実施した。
さらに、米軍の活動に対し、防衛大臣は、4月4日、ルース駐日大使などとともに米空母ロナルド・レーガンを訪問し、内閣総理大臣からのメッセージを伝えるとともに、防衛大臣自らが感謝の意を伝えた。また、同月23日、CBIRFの展開拠点である横田基地を訪問して日米共同訓練を視察するとともに、感謝の意を伝えた。
こうした米軍の支援を得て行われた日米共同の活動は、今後の日米同盟の更なる深化に繋がるものとなった。

(2)地震災害にかかる支援活動
沖縄普天間飛行場に所在する米海兵隊の航空機(KC−130J、CH−46など)は、地震発生直後から岩国飛行場、厚木飛行場、横田飛行場へ、水や毛布などの災害救援物資の空輸を繰り返した。
また、米海兵隊および米陸軍は、被災により使用不能となっていた仙台空港を被災各地への輸送拠点として優先的に復旧させることとし、同空港の滑走路の瓦礫除去などの作業を積極的に行った。また、石巻市などにおいては、入浴用シャワーを設置する支援を行ったほか、新学期を前に、生徒などと共同して石巻市の学校の瓦礫除去作業などを行うとともに、小中学校を訪問して米国文化を紹介する文化交流などを行った。さらに、自衛隊と共同してJR仙石線における瓦礫除去などの復旧作業に取り組んだ。米揚陸艦エセックスなどに乗艦した第31海兵機動展開部隊を主力とする海兵隊・海軍部隊は、停電が続いていた気仙沼大島への電源車や燃料の輸送支援、港湾の瓦礫除去作業などを行った。
米韓合同軍事演習に参加予定であった米空母ロナルド・レーガンなどの艦艇は、地震発生2日後の3月13日には仙台沖に到着し、米海軍はP-3C哨戒機、ヘリコプターも用いて直ちに行方不明者の捜索救助や水、食料などの救援物資の輸送活動などを行うとともに、行方不明者の沿岸部集中捜索活動にも参加した。
また、米海軍は揚陸艦トートゥガにより、北海道の陸自隊員約300名および車両約100台を被災地に輸送したほか、八戸港、宮古港、気仙沼港などでは、サルベージ船を用いて沈没船引き上げなどの港湾の復旧作業を支援した。
米空軍は、水、食料、毛布、医療品、燃料など大量の救援物資を自ら提供するとともに、わが国関係機関などが提供する物資の輸送を支援した。たとえば三沢基地では民生支援用としてガソリンを空自に提供した。
 
米軍重機による車両除去の状況
米軍重機による車両除去の状況
 
海自補給艦上で物資を搭載する米軍ヘリ
海自補給艦上で物資を搭載する米軍ヘリ

(3)原子力災害にかかる支援活動
福島第一原発における事故についても、米国から様々な協力の申し出がなされ、航空機による放射線の測定、画像の撮影などによる情報の提供のほか、消防車(2両)の東京電力への提供、消火ポンプ(5台)の貸与、核・生物・化学兵器対処用防護服の提供(約100着)、淡水を搭載したバージ船(2隻)とポンプの貸与、ホウ素の提供(約9トン)などの原子炉冷却のための支援を受けた。また、防衛大臣のイニシアティブにより、事故を受けて来日した米国原子力規制委員会(NRC:Nuclear Regulatory Commission)の専門家と防衛省・自衛隊を含む関係機関との間において緊密な意見交換が行われたほか、万一の状況に備えて米軍横田基地に展開した米海兵隊の放射能等対処専門部隊(CBIRF)と除染や医療支援といった対処の要領に関する調整が行われた。
 
CBIRFの訓練展示
CBIRFの訓練展示
 
横田基地においてCBIRF隊長から記念品を受け取る北澤防衛大臣
横田基地においてCBIRF隊長から記念品を受け取る北澤防衛大臣

(4)日米間の調整・連携
東日本大震災への対応において、米軍との協力は、捜索救助活動を行うのみならず被災者の生活および安全を確保する上で極めて重要であった。このため、防衛省・自衛隊および米軍との間で迅速かつ緊密な調整を行うべく、日米防衛協力のための指針で規定されている調整メカニズムに準じる形で、防衛省(市ヶ谷)および在日米軍司令部(横田)に自衛隊および米軍の調整を行うための日米調整所をそれぞれ設置するとともに、東北方面総監部(統合任務部隊司令部)内にも日米調整所を設置した。
これらの調整所は、中央(市ヶ谷および横田)と現場(仙台)の双方において、米軍との総合的な調整機能を発揮し、自衛隊および米軍の連携による迅速かつ効果的な支援活動に繋がった。現場の部隊も、米艦載ヘリが海自補給艦に着艦し救援物資を搭載したり、米軍輸送機から卸された物資を自衛隊車両に積み込んだり、共同で瓦礫の除去を行うなど、日米で連携して支援活動を行った。また、「日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(ACSA:Acquisition and Cross-Servicing Agreement)」の枠組により、自衛隊から米軍へ燃料などの提供が、米軍から自衛隊にシャワーセットなどの提供が行わるなど、日米間の連携が図られた。
このような日米の連携に際しては、共同対処能力の維持・向上のための共同訓練や、各種協議において積み重ねてきたことが活かされた。
 
日米調整所(仙台)の様子
日米調整所(仙台)の様子

2 その他の国
(1)オーストラリア
オーストラリア軍は保有する4機のC-17輸送機のうち1機を派遣し、3月14日に自国の救助隊員75名および救助犬2匹を日本に輸送した後、3月25日に帰国するまでの11日間、水などの救援物資、陸自第15旅団(那覇)の輸送を行った。また、3月22日には更に2機のC-17を用いて原発対応のための高圧放水ポンプを自国から横田飛行場へ緊急輸送した。
 
豪軍C-17による自衛隊車両の輸送〔豪国防省〕
豪軍C-17による自衛隊車両の輸送〔豪国防省〕

(2)韓国
韓国軍はC-130輸送機により、3月14日に救助隊員102名を日本に輸送したほか、日韓間で物資の輸送を行った。

(3)タイ
タイ軍はC-130輸送機により、3月19日に救援物資を輸送した。

(4)イスラエル
イスラエル軍は、3月27日に医療チームを派遣し、3月29日から4月10日まで宮城県南三陸町において診療活動を行った。
(5)フランス
フランス国防省は、3月22日、原子力災害派遣活動中の自衛隊を支援するため、防衛省に対し放射能防護服1,000着を無償で提供することを決定し、陸自が受け入れた。

 

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