コラム 

<解説>わが国周辺海空域の警戒監視について

6千を越す島々で構成されているわが国は、広大な海域に囲まれている島嶼国である。このため、各種事態に際し、自衛隊が迅速に対応できるようにするためには、平素よりわが国周辺海空域を常時監視することが重要であり、自衛隊では航空機やレーダーサイトなどにより、24時間・365日、警戒監視活動を実施している。
まず、海自は、P-3C哨戒機により上空からの洋上の監視を行っている。北はオホーツク海、南は東シナ海まで、わが国周辺海域においては多数の民間船舶や他国艦艇が航行しているが、P-3C哨戒機はこれら海域全体を毎日監視し、不審な船舶などを発見すれば、即座に中央に報告する仕組みになっている。また、必要に応じ護衛艦などを柔軟に運用して警戒監視態勢を維持している。
たとえば、99(平成11)年の能登半島沖での不審船事案や、01(同13)年の九州南西海域での不審船事案、また04(同16)年の先島列島における中国潜没潜水艦事案などは、いずれも警戒監視中のP-3C哨戒機により発見されたものである。近年東シナ海における中国などの活動が活発化しており、警戒監視は一層重要性が増している。実際、10(同22)年に発生した尖閣諸島周辺領海内における漁船衝突事件後の、中国漁業監視船による接続水域内での航行事案においても、P-3C哨戒機は24時間態勢で監視活動を実施し、海上保安庁などに必要な情報提供を行った。P-3C哨戒機を約80機保有している自衛隊だからできる、わが国の国益を守る重要な任務である。
また、空自は、全国28か所のレーダーサイトなどにより、わが国周辺の上空を24時間態勢で監視している。これにより、わが国周辺を飛行する多数の航空機を探知・識別し、領空に接近する不明機を発見した場合には、戦闘機の緊急発進を含む対領空侵犯措置を行っている。
平成22年度の緊急発進回数は386回であり、平成4年度以降最多となっている。この中には、10(同22)年6月に北海道周辺を飛行したロシアTu-160爆撃機を自衛隊の戦闘機により初めて目視確認および写真撮影した事例のほか、11(同23)年3月に尖閣諸島の領空に接近した中国Y-8哨戒機およびY-8情報収集機に対して緊急発進を行った事例などが含まれている。わが国の領空を保全するこれらの措置は、レーダーサイトなどによる間断ない監視と対領空侵犯措置のため待機を行う戦闘機に支えられているのである。
これらに加え、陸自の沿岸監視隊も主要な海峡において24時間態勢で警戒監視を実施しており、新中期防期間中(平成23年度〜平成27年度)には、南西地域の島嶼部に陸自の沿岸監視部隊を配置する予定である。
これらの陸・海・空自による警戒監視活動は、防衛省のみならず、政府全体としてもきわめて重要な情報収集手段の一つといえよう。
 
わが国周辺海空域の警戒監視について図表

 

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