コラム 

<解説>自衛隊の精強性向上などのための人事制度の見直しについて

自衛隊の人的構成については、95(平成7)年に策定された07大綱以来、部隊改編・人員削減を進める中、任務の多様化・国際化、装備の高度化などへの対応のため、その重点を熟練・専門性にシフトさせてきたほか、任期制自衛官の採用・再就職環境が厳しくなったことも考慮し、「非任期制自衛官」(一般曹候補生など)の採用拡大や、士から曹への昇任数確保などが図られ、その結果、幹部・曹の充足水準は高い一方で、士、特に、任期制士が減少してきた。士は若年者が多いことから、その減少により結果として自衛隊全体としての年齢構成が高齢化してきており、主として陸自において、年齢という観点からの精強性に問題が生じている。
また、防衛予算においては、人件・糧食費が4割を越えるなど大きな比重を占め、自衛隊の活動経費を圧迫している状況にある中、人件費は隊員の高齢化により更に増加するものと見込まれる。
一方、隊員の若年化を図るためには、任期制士の募集を拡大する必要があるが、任期制士はおおむね20代で退職することから、その後の再就職先が確保できるか否かが募集にも大きな影響を与えることとなる。しかしながら、募集・再就職のための環境は、少子高学歴化、産業構造の変化などにより厳しい状況にある。
こうした中、新防衛大綱・中期防においては、若年化による精強性の向上などとともに人件費の抑制・効率化を図ることとされ、これ受けて開始された人的基盤の改革においては、
○任務や自衛官の体力、経験、技能などのバランスに留意しつつ士を増勢し、幹部および准曹の構成比率を引き下げ、階級および年齢構成のあり方を見直し、若年化を進めることにより第一線部隊の精強性を向上させるとともに、中長期的に人件費を管理するため、定員および現員の数を管理する仕組みを確立
○限られた予算の中で第一線部隊に若年隊員を優先的に充当し必要な人員を確保するため、後方業務の合理化・効率化と処遇の見直しによる新たな任用制度を導入
○幹部・准曹・士の各階層の活性化を図るための施策を検討・導入
○年齢構成の改善を通じて精強化および人件費の効率化を図る観点から早期退職制度を導入
○厳しい労働環境に対応した募集・再就職援護態勢のあり方
などを検討しているところである。
 
自衛官の階級・年齢構成(全体の構成)

 

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