コラム 

<解説>航空防衛力を支える基地機能の維持について

航空機を用いて各種行動を行うには、離着陸が可能な滑走路が必要不可欠であることに代表されるように、航空防衛力は基地なくして発揮できないことから、航空自衛隊にとって基地は何よりの「基盤」であるといえる。
戦闘機や輸送機などを運用し、航空防衛力を継続的に発揮するためには、滑走路や管制塔といった航空機の運用に直接関係する施設や、航空機への燃料、弾薬などの補給のための設備などを維持・管理し、各種事態に備えておくことが必要である。また、基地は隊員の勤務・居住の拠点であるため、航空防衛力の担い手を支えるという観点からも、基地機能を維持することは重要である。
こうした基地機能を保つための業務を一手に担っているのが、施設隊、通信隊、管理隊、業務隊、衛生隊、会計隊などから構成される基地業務群であり、航空基地のインフラの維持整備や、隊員が安んじて任務に就くためのマネジメントなどの基地業務を行っている。
たとえば、施設隊は、滑走路に穴が空く被害を受けた場合、速やかに滑走路を使用可能にするだけでなく、庁舎、電気などの基地内の重要インフラの維持運営も担当している。基地施設の維持は、航空防衛力発揮に不可欠であり、施設機能に欠けるところがあれば、任務遂行に大きな支障をきたすこととなる。
また、業務隊は基地における給食業務や福利厚生業務などを担う。各基地では、献立、調理および衛生管理の面で充実した給食業務を行っているほか、不測の事態に備え、野外炊飯要領について訓練するなど、継続的に給食業務を行う態勢を維持している。
 
滑走路被害復旧訓練
滑走路被害復旧訓練
 
災害派遣時の野外炊飯
災害派遣時の野外炊飯

さらに、通信隊は通信インフラの維持を、管理隊は物品などの輸送や基地の警備を、衛生隊は隊員の健康の維持・管理を、会計隊は契約や給与業務などを担っており、航空防衛力をさまざまな面で支えている。
東日本大震災に際しては、被害を受けた松島基地が、地震発生からわずか4日後には最低限の基地機能を回復し、空輸される救援物資の集積拠点としての役割などを果たしたが、これは有事に備え有していた基地機能を維持する能力を活用したからこそといえる。また、被災地に近い分屯基地では、部隊の野外給食能力を活用し、昼夜を問わず継続して被災者などに食事を提供したが、これも部隊が給食能力を自己完結的に保有し、事態に対応できる態勢を整えていたからである。
このように航空防衛力を発揮する上で重要な役割を果たす基地機能を自己完結的に保持しつつ、新防衛大綱に示されているように、民間活力の有効活用などにより業務の質の向上を図るとともに合理化・効率化を推進しながら、あらゆる事態に即応し、かつ、継続的に航空防衛力を発揮できる態勢を整えていく。

 

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