コラム 

<Q&A>「動的防衛力」に関するよくある質問

Q1「基盤的防衛力構想によることなく、動的防衛力を構築する」とは、どういう意味ですか?

A 新しい安全保障環境のもとで、今後の防衛力の目指すべき方向性をより徹底して追求するため、51大綱以来の基盤的防衛力構想にとらわれずに取り組む、という意味です。
基盤的防衛力構想にとらわれるべきでないと考えたのは、基盤的防衛力構想は、東西が対峙していた冷戦時代に採用されたもので、防衛力の存在による抑止効果に重点を置いていますが、新たな安全保障環境では、防衛力の運用を重視し、抑止の信頼性を高めることが重要となっているなど、基盤的防衛力構想が前提としていた状況が大きく変化しているためです。
また、動的防衛力の構築に向けては、厳しさを増す財政事情のもと、防衛力の構造的な変革を図ることが不可欠ですが、基盤的防衛力構想を今後の方向性として掲げていては、標準的な装備の部隊をまんべんなく配置すればよい、という発想になりやすく、メリハリのある防衛力整備の妨げとなり得ることも考慮しました。


Q2「動的防衛力」は、16大綱の「多機能で弾力的な実効性のある防衛力」をどう発展させたものですか?

A 「多機能で弾力的な実効性のある防衛力」は、「対処」と「国際協力」を重視するものであり、その備えるべき特性として、「即応性、機動性、柔軟性および多目的性」が挙げられていました。
「動的防衛力」は、自衛隊の「運用」に焦点を当て、
●事態発生時の対処のみならず、平素からの常時継続的な防衛力の運用による「動的な抑止力」を重視
●「アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化」を役割として明確化
●従来に増して即応性、機動性、柔軟性および多目的性を向上
●防衛力の備えるべき要素として、自衛隊の各種活動を支える「持続性」にも着目
することとした点で、「多機能で弾力的な実効性のある防衛力」を発展させたものといえると考えています。


Q3「動的防衛力」の考え方は、いわゆる「脅威対抗」の考え方に立つのですか?専守防衛などとの関係は?

A 新防衛大綱においては、東西冷戦時代のような敵味方の対峙構造を前提とし、わが国に対する軍事的脅威に直接対抗する、いわゆる「脅威対抗」の考え方(わが国に対し侵略を行うことのできる軍事能力のみに着目し、これをもって脅威とみなし、このような軍事的脅威に対応できる防衛力を整備する考え方)には立っていません。
また、新防衛大綱では、わが国の安全保障における基本理念の中で、日本国憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本理念に従い、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、節度ある防衛力を整備するとのわが国防衛の基本方針を引き続き堅持することを明記しています。動的防衛力の構築は、このような基本方針のもとで行われるものです。

 

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