7 隊員の退職・再就職など
1 隊員の退職と再就職のための取組
自衛隊は、精強さを保つため、先に説明した若年定年制および任期制という制度を採用している。このため多くの自衛官は、一般職の国家公務員と異なり、50歳代半ば(若年定年制自衛官)または20歳代(大半の任期制自衛官)で退職することとなっており、その多くは退職後の生活基盤の確保のために再就職が必要である。
このため、これらの自衛官に対して再就職の支援を行うことは、雇用主たる国(防衛省)の責務であり、自衛官の将来への不安を解消し、在職中は安心して職務に精励できるようにするとともに、その士気を高め、優秀な人材を確保するためにも、きわめて重要であると認識しており、再就職に有効な職業訓練などの就職援護施策を行っている
1。
また、防衛省には自ら職業紹介を行う権限がないため、財団法人自衛隊援護協会が、厚生労働大臣と国土交通大臣の許可を得て、退職自衛官に対する無料職業紹介事業を行っている。今後も厳しい雇用情勢が続くことが予想される中、退職自衛官の雇用を確保するためには、就職援護施策のさらなる充実・強化が必要となっている。
10(同22)年12月に策定された新防衛大綱および新中期防においても、退職自衛官を社会で有効活用するための措置を着実に行いつつ、公的部門での受入れを含む再就職援護に関する施策を推進することとされている。
参照
II部2章3節
退職自衛官は、その一人ひとりが広範な職種・職域にわたる職務遂行と教育訓練によって培われた優れた企画力・指導力・実行力・協調性・責任感などを有している。また、職務を通じ、あるいは職業訓練などにより取得した各種の資格・免許も保有している。このため、在職時の職種・職域に関わらず、金融・保険・不動産業や建設業のほか、製造業、サービス業など幅広い分野で活躍し、雇用主から高い評価を受けている者が多い。さらに、地方公共団体の防災や危機管理の分野などにも採用され、活躍している。
企業で活躍する退職自衛官(販売業)
具体的な事例をあげれば、在職時、戦闘部隊で勤務した任期制自衛官がリゾートホテルの営業担当として目標を達成するばかりでなく、「報告・連絡・相談」を確実に実施する点についても高く評価されている。また、生命保険会社に再就職した普通科職種の若年定年制自衛官が、規律正しさや業務の期日・期限を厳守する姿勢などを高く評価されている。
このように再就職の支援は、退職自衛官の持つ高い能力を社会に還元する効果も有している。
(図表III-4-1-6参照)
2 隊員の退職後の再就職についての規制
自衛隊員の再就職などについては、公務の公正性の確保などの観点から、規制が設けられている。従来までの規制については、自衛隊員が離職後2年間に、その離職前5年間に防衛省と契約関係にある営利企業に就職する場合は、防衛大臣などの承認
2が必要となっており、10(同22)年、防衛大臣が自衛隊員の営利企業への就職を個別に承認したのは81件(81名)であった。
11(平成23)年の第177回国会に提出された国家公務員法等の一部を改正する法律案において、一般職国家公務員に準じた再就職等に関する規制(他の隊員についての依頼等(再就職あっせん)の規制、在職中の求職(自己求職活動)の規制、再就職者による依頼等(働きかけ)の規制)を導入する旨の自衛隊法の一部改正を盛り込んだ。
3 再任用制度
再任用制度は、定年後においても引き続き隊員として働く意欲と能力のある者を改めて採用する制度である。本制度により、高齢だが有為な人材の積極的活用や雇用と年金との連携を図ることができる。防衛省・自衛隊は、この制度に基づき、11(平成23)年3月末現在620名を再任用している。また、一般の公務員より早く定年を迎える自衛官が安心して職務に専念する環境を醸成するとの観点から、自衛官の再任用制度について、従来は1年以内であった任期を、60歳前においては3年以内の任期を可能とするよう、制度を改正した。
(図表III-4-1-7参照)