3 日韓防衛協力・交流
韓国は、歴史的にも、経済・文化などの各分野においてわが国と最も密接な関係を有してきた隣国の一つであり、また、地政学的な観点からもわが国の安全保障にとってきわめて重要な国である。さらに、わが国と同様、民主主義、法の支配、人権の尊重、資本主義経済といった基本的な価値観を共有するとともに、米国の同盟国として米軍の駐留を認めているなど、その戦略的利害関係の多くが共通している。このため、両国が、経済面だけでなく、安全保障面においても緊密に連携していくことは、アジア太平洋地域における平和と安定にとって大きな意義がある。
これまで日韓の防衛当局は、94(平成6)年以降、両国防衛相がほぼ毎年交互に訪問し、局長・審議官級の防衛実務者対話および外務当局を含めた安全保障対話を実施するなど、相互理解・相互信頼を増進させている。10(同22)年12月には李イ・ヨンゴル庸傑国防次官が訪日し、次官会談を実施したほか、11(同23)年1月、北澤防衛大臣が、防衛大臣としては6年ぶりに韓国を訪問し、金寛鎮(キム・グァンジン)国防部長官と防衛相会談を実施した。
日韓防衛次官会談(東京)
他方、日韓両国が直面している安全保障上の課題は、北朝鮮の核・ミサイル問題のみならず、テロ対策や、PKO、大規模自然災害への対応、海賊対処、海上安全保障など、広範にわたる複雑なものとなってきている。このため、こうした安全保障上の課題に両国が効果的に対応していくためには、相互理解・信頼醸成の増進のための交流にとどまらず、より広範かつ具体的な防衛協力を行っていくことが重要である。
このような認識のもと、09(同21)年4月の日韓防衛相会談の際、「日本国防衛省と大韓民国国防部との防衛交流に関する意図表明文書」
1に署名し、これまでの伝統ある日韓防衛交流の進展を図るとともに、さらなる発展に向け新たな協力分野を追求すべく努力するとした。11(同23)年1月の防衛相会談においては、哨戒艦沈没事件、延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件をはじめとする地域の安全保障情勢について意見交換を行うとともに、日韓の協力を未来志向的に発展させ両国の協力・交流を拡大・深化させていくとの認識のもと、PKO活動、人道支援および災害救援活動、捜索救難訓練などの分野において、水、食料、燃料などを相互に支援できるよう、ACSAについて意見交換を進めていくことで一致した。さらに、両大臣は、日韓防衛協力・交流の推進のため、情報共有が重要であるという認識のもと、今後、情報保護協定の内容について両国の防衛当局間で意見交換を進めていくことで一致した。さらに、11(同23)年6月、IISSアジア安全保障会議に際して行われた日韓防衛相会談において、ACSAや情報保護協定の早期締結の重要性を認識し、作業を加速していくことで一致した。
11(同23)年3月の東日本大震災の際には、北澤防衛大臣は金寛鎮国防部長官と電話会談を行い、韓国政府の救助隊員5名および救助犬2匹の派遣に対して謝辞を伝えた。会談後、韓国空軍C-130輸送機は日韓間で第2陣となる救助隊員102名や救援物資の輸送を行った。
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また、日韓両国は、アジア太平洋地域の平和と安定にとって不可欠の存在である米国と同盟関係にあることから、日米豪3か国協力と同様に、近年では、日米韓3か国での協力が進展している。10(同22)年6月には、第9回IISSアジア安全保障会議において09(同21)年に引き続き2回目となる日米韓防衛相会談を行い、情報共有や拡散に対する安全保障構想(PSI:Proliferation Security Initiative)などの分野での3か国による協力の検討や人道支援・災害救援などの分野において協力を推進していくことで一致した。
また、10(同22)年7月、米韓両国が実施した合同演習「インビンシブル・スピリット(Invincible Spirit)」に米韓からの招へいを受けてわが国から海上自衛官4名をオブザーバーとして派遣したことに続き、同年12月に実施した日米共同統合演習「キーン・ソード」には、韓国軍がオブザーバーを派遣している。今回初めて行われた米国との訓練への相互オブザーバー派遣は、日米韓連携をさらに強化することで、地域の平和と安定に資するものである。
わが国としては、今後とも、防衛や安全保障の分野においても、韓国との未来志向の協力関係を発展させていくことが重要であると考えている。
(図表III-3-2-3参照)