2 日豪防衛協力・交流
オーストラリアは、わが国にとってアジア太平洋地域の重要なパートナーであり、同じ米国の同盟国として、民主主義、法の支配、人権の尊重、資本主義経済といった基本的な価値観のみならず、安全保障分野において戦略的利益や関心を共有している。特に、近年、グローバルな課題については、各国が一致して取り組むべきとの認識が国際社会に浸透してきていることから、アジア太平洋地域における責任ある国として、わが国とオーストラリアは、災害救援や人道支援活動などの非伝統的安全保障分野を中心とした相互協力・連携を強めている。
日豪二国間の防衛協力・交流は、07(同19)年3月、日豪両首脳の間で、米国以外では初めての安全保障分野の共同宣言である「安全保障協力に関する日豪共同宣言」
1を発表して以来、着実に進展しており、現在ではより実際的・具体的な協力の段階に移行している。
折木統合幕僚長とアンガス・ヒューストン豪国防軍司令官
10(同22)年5月、第3回日豪外務・防衛閣僚協議(「2+2」)において、物品役務相互提供協定(ACSA:Acquisition and Cross-Servicing Agreement)
2およびACSAに基づく手続取決めの署名が行われた。署名式と同日に行われた日豪「2+2」および日豪防衛相会談においては、国連平和維持活動(PKO)や災害救援活動などの現場で活動する豪軍との間で協力が一層促進されることへの期待が表明されるとともに、今後の両国間の協力分野の拡大の検討が言及された。
日豪ACSAの締結によりPKOや国際緊急援助活動などを自衛隊と豪軍が行う際、現場において水・食料・燃料・輸送などの物品や役務を、確立された統一的な手続により相互に融通できるようになり、日豪間の戦略的パートナーシップが一層円滑・強固なものとなる。また、このような日豪間の協力の円滑化・強化は、アジア太平洋地域の平和と繁栄に貢献するとともに、協力を通じた域内秩序の形成にも資することが期待される。
これまで、わが国がACSAを締結したのは米国のみであった。日米安全保障体制を前提とした米国以外の国との初めてのACSAの締結は、今後わが国が行う防衛協力・交流にとって大きな意味を持つものと考えられる。
10(同22)年10月11日、拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)に連接して行われた日豪防衛相会談においては、北澤防衛大臣より、今後の防衛協力は、共同訓練、人道支援・災害救援活動などの場面でACSAを活用するなど、具体的な実施段階に移行させていくことが重要である旨指摘し、双方の認識が一致した。ACSAが発効するためには国会の承認が必要であり、またその実施のための国内法を早急に整備する必要がある。
近年では、米国を含めた日米豪3か国の協力も増えている。日豪は、先に述べたとおり、ともに米国の同盟国であると同時に、基本的な価値観を共有しており、アジア太平洋地域および国際社会が直面するさまざまな課題の解決のため、緊密に連携・協力してきている。このような連携・協力を効果的、効率的なものとするためには、地域の平和と安定のために不可欠な存在である米国を含めた日米豪3か国による協力を積極的に推進することも重要である。
このような認識のもと、07(同19)年6月には、第6回IISS(英国国際戦略研究所)アジア安全保障会議(シャングリラ会合)3の機会をとらえ、初めてとなる日米豪防衛相会談が行われ、3国間の協力を推進していくことで一致したほか、10(同22)年5月の日豪外務・防衛閣僚協議においても、日米豪3か国の枠組で、この地域の安全保障戦略に関する協議・協力を深めることで一致した。
事務レベルにおいても、07(同19)年4月、08(同20)年4月、09(同21)年11月、11(同23)年1月の4回にわたって、3か国の局長級会合である日米豪安全保障・防衛協力会合(SDCF:Security and Defense Cooperation Forum)が行われ、3か国間の防衛協力の協調的推進などについて協議を行ったほか、10(同22)年6月には、海自、米海軍および豪空軍との間で、海自P-3Cなどによる3度目となる日米豪3か国による訓練を実施した。さらに同月には、グアムにおいて日米豪空軍種ハイレベル協議が開催され、3か国の空軍種による防衛協力などに関して協議を行い、これを受け、11(同23)年1月には、空自および米空軍との間で行われたグアムにおける日米共同訓練「コープ・ノース・グアム」に豪空軍から初めてオブザーバーを派遣した。
これらの協議や協力を通じて情勢認識を3か国で共有し、政策協調を図るとともに、ACSAが発効した後は、災害救援活動や共同訓練などの運用面における3か国の協力をさらに積極的に進めていくなど、3か国の協力関係を一層発展・深化していくことが重要である。
また、11(同23)年3月の東日本大震災の際に、豪空軍のC-17輸送機による輸送業務が、自衛隊および在日米軍との緊密な連携のもとに行われた。豪空軍はC-17を最大で3機日本へ派遣し、1機が日本国内で陸自第15旅団(那覇)や救援物資の輸送支援を、2機が原発対応のため高圧放水ポンプの輸送を実施した。北澤防衛大臣はスミス国防大臣との電話会談において、豪政府から救助隊員75名および救助犬2匹が豪空軍C-17輸送機によって派遣されたこと、C-17 輸送機が国内においてさまざまな輸送業務を行ったことに対して謝辞を伝えた。
参照
特集
(図表III-3-2-2参照)