第III部 わが国の防衛に関する諸施策 

8 多国間共同訓練

1 アジア太平洋地域での多国間共同訓練の意義
アジア太平洋地域では、00(平成12)年より、従来から実施していた戦闘を想定した訓練に加え、人道支援・災害救援(HA/DR:Humanitarian Assistance/Disaster Relief)、非戦闘員退避活動(NEO:Non-combatant Evacuation Operation)などの非伝統的安全保障分野を取り入れた多国間での訓練への取組を始めるようになった。
このような多国間の共同訓練に参加し、また主催することは、自衛隊の各種技量の向上はもとより、関係国間の各種調整や意見交換を通じ、協力の基盤を作る上で重要であると考えており、防衛省・自衛隊としても、引き続き、こうした訓練に積極的に取り組んでいるところである。
(図表III-3-1-6・7参照)
 
図表III-3-1-6 多国間共同訓練の参加など(10(同22)年以降)
 
図表III-3-1-7 多国間共同訓練へのオブザーバーの招へいなど(10(平成22)年以降)

2 多国間共同訓練への取組
(1)多国間共同訓練の参加・主催
02(同14)年4月、第2回西太平洋潜水艦救難訓練をわが国として初めて海自が主催し、同年10月にも、海自が多国間捜索・救難訓練を主催した。先に述べたように、11(同23)年3月には、ARFの枠組で2回目となる災害救援実動演習(ARF-DiREx2011)をわが国とインドネシアが共同で開催し、防衛省・自衛隊からも演習準備に携わってきた要員約10名が参加した。
また、自衛隊は、05(同17)年以降、毎年行われている、米・タイ共同主催の多国間共同訓練である「コブラ・ゴールド」演習に参加している。11(同23)年2月に行なわれた「コブラ・ゴールド11」では、指揮所演習、人道・民生支援活動の医療部門、在外邦人等輸送訓練に参加した。
 
コブラ・ゴールド11における人道・民生支援活動(医療)の様子
コブラ・ゴールド11における人道・民生支援活動(医療)の様子

さらに、10(同22)年8月、海自はオーストラリア主催の多国間海上共同訓練「カカドゥ10」に参加し、同月にシンガポールで開催された第5回西太平洋潜水艦救難訓練に参加するとともに、10(同22)年6月には、海自、米海軍および豪空軍との間で、3度目となる日米豪3か国による訓練に、11(同23)年3月にはパキスタン主催多国間海上共同訓練(AMAN 11)に参加し、参加各国海軍との相互理解の増進を図った。
 
カカドゥ10の様子
カカドゥ10の様子

このように、多数の多国間共同訓練に積極的に参加している。

(2)多国間共同訓練へのオブザーバーの招へいなど
01(同13)年9月、わが国で行った第4回日露捜索・救難共同訓練に、アジア太平洋地域の8か国からオブザーバーの参加を得て以来、諸外国からのオブザーバーの招へいにも取り組んでいる。
また、陸自は、02(同14)年以降、多国間協力の一環として、毎年アジア太平洋地域多国間協力プログラム(MCAP:Multinational Cooperation program in the Asia Pacific)を主催し、アジア太平洋地域を中心とした関係各国の実務者を招へいしている。10(同22)年8月には、アジア太平洋地域の23ヶ国および15の国連機関などの組織から参加を得て、国際的なHA/DRにおける即応性向上のための多国間の連携・協力について議論して、相互理解および信頼醸成を図った。
さらに、10(同22)年3月に発生した韓国海軍の哨戒艦「天安」沈没事件を契機として、同年7月、米韓両国は日本海海上において対潜水艦訓練などを含む合同演習「インビンシブル・スピリット(Invincible Spirit)」を行ったが、この際、米韓両海軍からの招へいを受けて海上自衛官4名をオブザーバーとして派遣した。これに引き続き同年12月に実施された日米共同統合演習「キーン・ソード」では、米国が韓国を招待し、韓国軍が初めてオブザーバーを派遣した。
また、11(同23)年1月、空自および米空軍との間で行われた日米共同訓練「コープ・ノース・グアム」においては、豪州からオブザーバーが初めて派遣された。
参照 2節2、3及び4
 
コープ・ノース・グアム
コープ・ノース・グアム

 

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