第III部 わが国の防衛に関する諸施策 

2 島嶼部に対する攻撃への対応
新防衛大綱では、四方を海で囲まれ長大な海岸線と多くの島嶼(とうしょ)を有するというわが国の地理的要素について述べている。中でも、多くの島嶼が存在するという特性からは、わが国に対する武力攻撃の形態の一つとして島嶼部に対する攻撃が想定される。

1 自衛隊の対応
島嶼部に対する攻撃への対応は、自衛隊による平素から常時継続的な情報収集・警戒監視・偵察活動(常続監視)などにより、兆候を早期に察知することが重要である。この対応については、陸上の防衛のための作戦(2節7参照)との共通点が多く、事前に兆候を得た場合には敵の部隊などによる攻撃を阻止するための作戦を行い、また、事前に兆候が得られず島嶼を占領された場合にはこれを奪回するための作戦を行う。
参照 資料25・26

こうした作戦を行う場合、陸・海・空自が一体となった統合運用が特に重要である。統合運用によって機動運用可能な部隊を迅速に展開・集中するとともに、平素から配置している部隊と協力して、敵の部隊などを阻止・排除する。その際、巡航ミサイル対処を含め、島嶼周辺における防空態勢を確立するとともに、周辺海空域における航空優勢1、制海および海上輸送路の安全を確保することが重要になる。

2 防衛省・自衛隊の取組
防衛省・自衛隊は、新防衛大綱および新中期防に基づき、自衛隊配備の空白地域となっている南西地域の島嶼部について沿岸監視部隊の配置や初動を担任する部隊の新編を検討するなど、平素からの情報収集・警戒監視態勢や事態発生時の迅速な対処に必要な体制を整備することとしている。
また、迅速な部隊の展開・対応能力を確保するため、輸送機、地対艦誘導弾などを整備するとともに、島嶼部1自衛隊の対応に対する攻撃の抑止および対処にかかる訓練なども行っている。そのほか、島嶼部における対応能力を向上させるため、南西地域において、陸・海・空自の統合運用能力の向上のための各種演習を行うとともに、知識・技能の習得や相互連携要領の確立のための米軍との実動訓練などにも取り組んでいる。
さらに、戦闘機、地対空誘導弾の整備などによる防空能力の向上のための取組、潜水艦、固定翼哨戒機などの対潜戦能力向上による海上交通の安全確保のための取組などは、島嶼部攻撃への対応の観点からきわめて重要である。
参照 2節7


 
1)空において相手航空戦力より優勢であり、相手から大きな損害を受けることなく諸作戦を遂行できる状態。


 

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