近代化されたF-15
(3)サイバー攻撃への対応
自衛隊の情報通信ネットワークを防護するための機能を向上させるとともに、政府全体として行う対応に寄与する。
(4)ゲリラや特殊部隊による攻撃への対応
ゲリラや特殊部隊による攻撃に迅速かつ効果的に対応できるよう、部隊の即応性、機動性などを一層高める。
(5)弾道ミサイル攻撃への対応
弾道ミサイル攻撃への対処体制を強化する。
また、わが国の防衛に万全を期すとともに、将来的な迎撃ミサイルの能力向上を着実に図るため、弾道ミサイル防衛用能力向上型迎撃ミサイルに関する日米共同開発を引き続き推進するとともに、その生産・配備段階への移行について検討の上、必要な措置を講ずる。
(6)複合事態への対応
複数の事態が連続的または同時に生起した場合にあっても、迅速かつ適切な対応を行えるよう、指揮統制、後方支援などの態勢を整備する。
(7)大規模・特殊災害などへの対応
大規模地震、原子力災害など、さまざまな大規模・特殊災害などに迅速かつ適切に対応し、国民の人命および財産を保護する。
2 アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化
わが国周辺において、平素からの情報収集・警戒監視や訓練・演習などの部隊運用を適時・適切に行うことにより、わが国周辺の安全保障環境の安定を目指す。
各レベルにおいて二国間・多国間の安全保障対話、防衛協力・交流、各種の共同訓練・演習を多層的に推進するとともに、域内協力枠組の構築・強化を促進する。また、人道支援・災害救援などの非伝統的安全保障分野において防衛医学、地雷・不発弾処理などの自衛隊が保有する知識・経験を活用することで、同分野における域内諸国の対処能力向上や人材育成などの能力構築支援
1を実施する。
3 グローバルな安全保障環境の改善
国際平和協力活動に積極的に取り組む。国連平和維持活動の実態を踏まえ、PKO参加5原則などわが国の参加のあり方を検討する。
また、能力構築支援や、国際テロ対策、海上交通の安全確保や海洋秩序の維持のための取組などを積極的に推進する。さらに、気候変動や資源の制約が安全保障環境や作戦環境に及ぼす影響についての検討、所要の研究の推進など必要な措置を講ずる。
国際平和協力センターにおいて、国際平和協力活動などに関する教育を実施するとともに、教育対象者を関係府省職員など自衛隊員以外に拡大することを検討の上、必要な措置を講ずる。
国際連合を含む国際機関などが行う軍備管理・軍縮分野における諸活動に対し、引き続き積極的に協力する。
4 体制整備にあたっての重視事項
新中期防においては、体制整備に当たっての重視事項として、1)統合の強化、2)国際平和協力活動への対応能力の強化、3)情報機能の強化、4)科学技術の発展への対応、5)衛生機能の強化に区分して、図表II-3-1-3に示すとおり、具体的な施策を掲げている。
5 防衛力の能力発揮のための基盤
(1)人的資源の効果的な活用
ア 人材の確保・育成など
質の高い人材の確保・育成を図るとともに、訓練基盤の充実を図りつつ、必要な教育訓練を充実する。また、防衛大学校改革を着実に推進する。
イ 人事施策の見直しを含む人事制度改革
自衛隊が遂行すべき任務や、体力・経験・技能などのバランスに留意しつつ、士を増勢し、幹部および准曹の構成比率を引き下げ、階級および年齢構成のあり方を見直し、一層の精強性を実現する。このため、自衛官の定員および現員について階級別定数管理などの基本原則を確立の上、体系的な管理を行うための制度を構築する。
その上で、第一線部隊などには、若年隊員を優先的に充当するとともに、その他の職務について最適化された給与などの処遇を適用する制度を設計・導入するなどの人事制度改革を実施し、人件費の追加的な負担を招かない範囲で所要の実員を確保する。
また、幹部・准曹・士の各階層の活性化を図るための施策を検討し、導入するほか、退職自衛官を社会で有効活用するための措置を着実に行いつつ、公的部門での受入れを含む再就職援護や退職後の礼遇などに関する施策を推進し、これらと一体のものとして自衛官の早期退職制度などを検討し、導入する。
ウ 後方業務の合理化・効率化の推進
駐屯地・基地業務などの後方業務について、民間活力の有効活用などにより業務の質の向上を図るとともに合理化・効率化を推進し、人員の一層の合理化を進め、人件費を抑制し、第一線部隊などを中心に必要な人員を確保する。
エ 防衛研究所の研究・教育機能の活用
防衛研究所について、内部部局および各自衛隊のニーズに即したより組織的かつ効率的・効果的な運営を追求し、その安全保障および戦史にかかる研究・教育機能の活用を図る。
(2)防衛生産・技術基盤の維持・育成
国内に保持すべき重要な防衛生産・技術基盤を特定し、その分野の維持・育成を重点的に実施するとともに、実効性のある防衛力整備を効率的に実現するとの観点も踏まえ、防衛生産・技術基盤に関する戦略を策定する。
(3)防衛装備品をめぐる国際的な環境変化に対する方策の検討
平和への貢献や国際的な協力において、自衛隊が携行する重機などの装備品の活用や被災国などへの装備品の供与を通じて、より効果的な協力ができる機会が増加している。また、国際共同開発・生産に参加することで、装備品の高性能化を実現しつつ、コストの高騰に対応することが先進諸国で主流になっている。このような大きな変化に対応するための方策について検討する。
(4)より一層の効果的かつ効率的な装備品などの取得の推進
装備品の性能、価格などの総合的な観点から、必要な装備品などを適正な価格で調達するためコスト・マネジメントの手法の確立およびそのための体制の充実、強化を図る。
また、民間活力を効果的に引き出す調達手法を導入するとともに、短期集中調達・一括調達など効果的かつ効率的に装備品などの調達を行うため、契約にかかる制度の改善に取り組む。
(5)装備品などの運用基盤の充実
装備品などの運用に不可欠な燃料、部品などの確保に留意しつつ、可動率をより低コストかつ高水準で維持できるよう、装備品などの維持整備について、国内外の先進的な事例も参考にして、維持整備にかかる成果の達成に応じて対価を支払う新たな契約方式(Performance Based Logistics)の導入を図るとともに、業務全体の質の維持向上および効率化に向けた抜本的な取組などにも着手する。
なお、こうした取組などを通じ、平成23年度から平成27年度までの各自衛隊の装備品の維持整備などにかかる経費の総額を、5の「自衛隊の能力などに関する主要事業」に示した主要事業の整備が可能な水準にまで実質的に抑制するとともに、平成28年度以降の更なる経費の抑制につなげ、これにより、継続的かつ着実な防衛力整備を実現することとしている。各自衛隊による経費抑制の実績については適時公表していく。
(6)関係機関や地域社会との協力の推進
警察、消防、海上保安庁などの関係機関との連携を強化するとともに、地方公共団体、地域社会との協力を推進するほか、各種事態のシミュレーションや総合的な訓練・演習を平素から実施するなど、政府の意思決定および対処に係る機能・体制を検証し、法的側面を含めた必要な対応について検討する。
また、防衛施設の効率的な維持および整備を実施するとともに、関係地方公共団体との緊密な協力のもと、防衛施設とその周辺地域との一層の調和を図るため、引き続き、基地周辺対策を推進する。
参照
III部4章