4 海外における活動
オーストラリアは、近隣地域の安全、安定および結束を自国の戦略的利益と位置づけており、近隣地域の不安定な国家は、犯罪やテロの温床となる可能性があるほか、国内紛争が起これば自国を含む地域社会に大きな損害をもたらすことから、軍の派遣を含めた積極的な支援を通して地域の安定に貢献するとしている
1。
また、中東地域などの遠隔地においても、広範な戦略的利益にかない、また、最小限のリスクで任務を成功させる環境が整っていると判断した場合には、軍を派遣するとしている
2。
このような方針に基づき、オーストラリアは、以下の地域を中心に、約5万7,000人の現有兵力
3のうち約3,000人を海外に派遣している
4。
1 東ティモール
オーストラリアは、東ティモールにおいて独立の機運が高まった99(平成11)年以来、東ティモールの政治的、社会的安定のために積極的な支援を行っている。豪軍は、国際治安部隊(ISF:International Stabilisation Force)を主導しており、約400名が約80名のニュージーランド軍とともに活動している
5。
2 ソロモン諸島
オーストラリアは、90年代後半にソロモン諸島で民族紛争が激化して以来、ソロモン諸島の安定と発展のために積極的な支援を行っている。03(同15)年7月からはソロモン諸島に対する地域支援活動(RAMSI:Regional Assistance Mission to Solomon Islands)
6が主体となって支援を行っているが、その軍事部門にはニュージーランド、パプアニューギニア、トンガの各軍とともに約80名の豪軍が参加し、現地で活動する多国籍警察部隊の安全確保に従事している。
3 アフガニスタン
オーストラリアは、01(同13)年の9.11テロに際し、米豪同盟のもとで、いち早く米国への支持を表明し、同年10月にはアフガニスタンへ部隊を派遣した。オーストラリアは、アフガニスタンが平和で安定した国になるよう支援することを通じてテロの拡散を防ぎ、同国が再びテロの温床となることを防ぐことを目的として、国際治安支援部隊(ISAF:International Security Assistance Force)のもとで活動している。09(同21)年7月より新たな部隊が派遣され
7、現在、アフガニスタン国内で約1,550名がウルズガン州での復興支援活動やアフガニスタン治安部隊の訓練などに従事している。また、アフガニスタン周辺においても、約800名がアフガニスタンでの任務を支援するために活動している
8。ギラード政権は、アフガニスタンにおける豪軍の関与継続を表明している
9。
豪軍によるアフガニスタン国軍兵士に対する教育訓練〔豪国防省〕
1)「国防最新報告2007」および09年「国防白書」。
2)09年「国防白書」。
3)軍種別内訳は、陸軍:約28,200人、海軍:約14,300人、空軍:約14,100人。
4)本文で記述した活動に加え、ハイチで発生した大地震に伴う支援活動の一環として、10(平成22)年2月から3月の間、5人の空軍航空管制官をハイチに派遣し、現地の空港の管制およびハイチ人管制官の指導を実施した。また、10(同22)年7月に発生したパキスタン洪水被害に際しては、パンジャブ州ムルタンで被災者に医療支援を提供するとともに、C-17A輸送機で関連物資の輸送等を実施した。
5)06(平成18)年4月、東ティモールの首都ディリにおいて反乱兵によるデモが暴徒化、同国政府による要請を受け、豪軍が派遣された。09(同21)年12月、豪国防省は、東ティモールの治安状況は安定してきているとして、豪軍をそれまでの650名から400名まで削減すること、またISFが東ティモール軍の能力向上に焦点を当てていくことを発表した。
6)部族闘争が高じて国内の治安悪化に収拾がつかなくなった同国政府の支援要請を受け、オーストラリアを中心に、南太平洋諸国の参加により開始。主に警察部隊と軍部隊からなる。参加国はオーストラリアのほか、ニュージーランド、パプアニューギニア、トンガなど、計15か国。
7)09(平成21)年4月29日、政府は、アフガニスタンに新たに約450名を派遣することを発表した。新たな派遣部隊には、ウルズガン州におけるアフガニスタン軍の訓練およびその支援に従事する約330名のほか、同年8月の選挙における治安確保のため短期的に派遣された約120名が含まれる。
8)洋上哨戒機2機、輸送機3機、フリゲート1隻が中東で活動。09(平成21)年5月、中東で活動する洋上哨戒機とフリゲートに対し、対テロ任務に加えて新たに海賊対処任務も付与することを発表した。
9)10(平成22)年11月18日、ギラード首相による連邦議会における演説での発言。豪軍は非NATO加盟国の中でISAFに対する最大の貢献国となっている。