第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

6 地域の諸問題
東南アジアでは、域内各国の協力関係が進展する一方で、依然として不安定要素も存在している。
カンボジアとタイの間では、世界遺産に登録されたプレアビヒア寺院周辺の国境未画定地域の扱いをめぐる緊張状態が続いている。両国は、11(平成23)年2月に同地域で発生した銃撃戦を受け、ASEAN議長国であるインドネシア率いる停戦監視団の派遣に合意したが、同年4月には再び大規模な衝突が発生するなど、事態の解決に向けた交渉は難航している。その後、両国間の問題は、同年5月に開催されたASEAN首脳会議においても議論されたものの、両国の主張が平行線をたどっていることなどから、国際司法裁判所で判断される見通しとなった。
フィリピンでは、政府とイスラム系反政府勢力のモロ・イスラム解放戦線(MILF:Moro Islamic Liberation Front)が約40年にわたり武力衝突を繰り返してきたが、03(同15)年の停戦合意、04(同16)年からの国際監視団(IMT:International Monitoring Team)の活動により、和平プロセスが進展した。しかし、08(同20)年8月以降、懸案であった土地問題解決をめぐり武力衝突が再び激化し、同年11月末にIMTは活動を中止した。その後、09(同21)年12月に和平交渉を再開、同年2月末にIMT1はミンダナオ島での活動を再開したが、アロヨ前政権下での和平合意は実現しなかった。アキノ政権下においても、11(同23年)3月以降、和平交渉が行われており、今後、ミンダナオ和平の最終合意が早期に達成することが望まれる2


 
1)11(平成23)年3月末現在のIMTの構成国は、マレーシア、日本、ブルネイ、リビア、EU、ノルウェーであり、NGOも参加している。

 
2)わが国は、09(平成21)年12月、日本、英国、トルコ、および4つのNGOから構成される国際コンタクト・グループ(ICG: International Contact Group)への参加を決定している。ICGは、ミンダナオ和平当事者への助言、和平交渉へのオブザーバー参加などを行っている。


 

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