第III部 わが国の防衛に関する諸施策 

(VOICE)日本の安全保障を支える防衛生産・技術基盤の一翼として

(株)小松製作所 特機事業本部 技術研究所 開発第一部
グループ・マネージャー 小松  崇(こばやし しゅう)氏
技師 細川 大輔(ほそかわ だいすけ)氏

 弊社は、火砲用弾薬、装甲車などの製造に実績のある企業です。その中で私たちは、陸上および航空自衛隊に納入している軽装甲機動車をはじめ、主として装甲車の研究・開発を行っています。
 装備品の開発は、数千枚にものぼる設計図面の作図と修正を経て、試作車を造り上げる作業からはじまり、様々な試験で明らかになった改善を織り込んで量産化を目指すため、部隊への配備までには数年を要するのが通常です。
 これに対し、7年前の自衛隊のイラク派遣では、弊社が製造する軽装甲機動車などの改修をわずか3ヶ月程度で行わなければならなかったという点で極めて特異なケースでした。
 現地の状況などが不透明な中で、防護性能強化のための方策をはじめとして、どういった改修をどの程度行うべきか、全てが手探りの状況でしたが、どのスタッフも、「自分たちが開発・製造した装備品の不具合が原因で死者を出してはならない」との強い意気込みを持っていました。他方で、部隊派遣までの時間的制約の中で、例えば、「路上に仕掛けられたワイヤートラップなどから隊員を守るためのワイヤーカッターにはどの程度の強度を持たせるべきか?」といった必要最低限の問題を優先的に解決することが求められ、社内は入社以来感じたことがないほどの緊張感に包まれていました。それでも改修作業を3ヶ月程度で行うことができたのは、それまでの設計・開発の過程で、ネジ一本が車両全体に与える影響まで頭に叩き込んできたことが大きかったと思います。
 結果的に、一人の死者も出すことなく任務を完遂できたのは、ひとえに派遣隊員の方々などの尽力によるものですが、テレビで映し出された装備品の活躍を目にして、私たちも日本の安全保障に貢献していることを肌で実感しました。
 現在、社内では、ハイブリッド電気駆動技術により、車両の静粛性、機動性、拡張性などを高め、将来の装甲車の性能を大きく向上させる自主的な研究を進めています。こうした一つ一つの技術シーズの育成に努め、必要なときに必要な技術を迅速に提供できるようにしておくことは、わが国の防衛を支える上で極めて重要であると思います。こうした考えのもと、今後も、これまでの経験を活かして、日々研鑽を積んでいきたいと考えています。
 
設計図面のチェックを行う小松グループ・マネージャー
 
コンピューターで作図中の細川技師
 
イラクに派遣された軽装甲機動車

 

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