第III部 わが国の防衛に関する諸施策 

(解説)韓国哨戒艦沈没事件をめぐるわが国の取組

 10(同22)年3月26日、韓国海軍の哨戒艦「天安」(チョナン)が北方限界線(NLL:Northern Limit Line)付近の黄海において沈没する事件が発生した。その後、同事件をめぐり、米国、オーストラリア、英国、スウェーデンの4カ国の専門家を含む軍民の合同調査団が調査を実施し、同年5月20日、同艦は、北朝鮮の魚雷攻撃により沈没したとの調査結果を発表した。
 調査内容について事前に韓国側より十分に説明を受けてきたことを踏まえ、わが国は韓国を強く支持するとともに、北朝鮮を強く非難する旨を表明した。その上で、韓国哨戒艦に対する北朝鮮による攻撃は地域・国際の平和と安定の観点から許されない行為であるとの立場から、国際社会に対して積極的な働きかけを行った。その結果、同年6月のG8ムスコカ・サミットにおいて首脳宣言が、また同年7月には国連安保理において議長声明が発出され、北朝鮮の攻撃に対する国際社会としての明確なメッセージが発出された。
 合同調査団の調査結果発表を受け、防衛省は、自衛隊の態勢を再点検するとともに、引き続き情報収集に務め、警戒監視活動に万全を期すようにとの防衛大臣の指示を発出し、引き続き必要な態勢をとっている。また、同年6月のIISSアジア安全保障会議(シャングリラ会合)に際して日米韓防衛相会談を行い、日米韓の協力・連携の重要性を確認し、さらに、米韓が同事件を受けて同年7月25日から28日にかけて実施した合同軍事演習「インビンシブル・スピリット(Invincible Spirit)」に、米韓からの招へいを受けて海上自衛官4名をオブザーバーとして派遣した。派遣された自衛官は、米空母「ジョージ・ワシントン」に乗艦し、米軍および韓国軍による演習を見学した。
 防衛省としては、今後も、地域の平和と安定のため、未来志向の日韓の連携を強化していく一方で、米国を始めとする関係各国や国内関係機関とも引き続き緊密に連携・協力していく考えである。

 
韓国哨戒艦沈没事件に関する関係閣僚会議 10(平成22)年5月20日〔内閣広報室〕
 
洋上で演習中の米海軍原子力空母ジョージ・ワシントン〔米海軍第7艦隊〕

 

前の項目に戻る     次の項目に進む