第III部 わが国の防衛に関する諸施策 

(解説)わが国の弾道ミサイル防衛の信頼性・実効性について

 09(平成21)年4月の北朝鮮ミサイル発射事案などを受け、わが国では弾道ミサイルの脅威への関心が高まった一方、弾道ミサイル防衛(BMD:Ballistic Missile Defense)の信頼性や実効性を心配する声も聞かれた。ここでは、BMDの信頼性や実効性に関する防衛省の認識を紹介する。
 BMDは、弾道ミサイルを着弾前に迎撃ミサイルで破壊するものであり、弾道ミサイル発射側が意図した被害の発生を防止する唯一の手段である。この能力は、非常に高速で飛行する目標を遠距離から探知・追尾するセンサ技術、大量のデータを高速で解析・伝達する技術、迎撃ミサイルを緻密に制御して直撃させる技術などの関連技術が近年飛躍的に進歩したことにより実現した。
 核などの大量破壊兵器を搭載可能な弾道ミサイルの拡散は国際社会が共有する懸念であり、既に日米両国が迎撃能力を有しているほか、欧州・中東諸国も導入を進めている。
 わが国のBMDは、半径数百kmという広域を防護可能なSM-3搭載イージス艦により日本全土を守り、さらに、半径数十kmという拠点の防護に適したペトリオットPAC-3により重要な場所を守るという多層防衛の考え方を採用している。両システムは、わが国や米国などが行った発射試験で良好な結果を示している。
 たとえば、SM-3搭載イージス艦については、米国ミサイル防衛庁の公表資料によると、これまでの試験で20発の迎撃ミサイルのうち16発が命中した。この実績には、わが国の発射試験の結果が含まれている。
 ペトリオットPAC-3については、現在、米国政府により必ずしもすべての試験結果が網羅的に公表されているわけではないが、自衛隊が米国で実施した2回の発射試験(08(同20)年9月、09(同21)年9月)では、弾道ミサイル模擬標的に命中させた。また、米国政府発表によると、03(同15)年の米国などによるイラクへの武力行使の際に現地に展開したペトリオットPAC-3は、迎撃範囲のすべての弾道ミサイルの迎撃に成功したとされている。なお、一般には、試験を通じて信頼性を一層向上させていくものであり、重要なのは試験における命中率だけではないことに留意が必要である。
 さらに、防衛省・自衛隊としては、BMDによる対処を実効的に行うため、弾道ミサイル発射の兆候に関する情報収集・警戒監視能力の強化や、部隊の迅速な展開や対処態勢の持続といった運用能力の向上に加え、迎撃能力が向上したSM-3ミサイルの開発などに取り組んでいる。
 
09(平成21)年10月、イージス艦「みょうこう」のSM-3発射試験

 

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