第II部 わが国の防衛政策の基本と防衛力整備 

(解説)自衛官の人員(実員)充足の現状

 自衛官の定員は、自衛隊がわが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、各自衛隊の任務を遂行する上で必要な機能を積み上げて編成された部隊などの人数である。
 自衛隊の発足後間もない昭和30年代は、自衛隊を取り巻く社会的環境が厳しかったこともあり、定数を充たすだけの自衛官を募集・採用することが大変困難であった。このため、仮に定員分の人件・糧食費を予算に計上してもかなりの金額は執行できないため、予算の効率化の観点から、自衛官の定員に対してどの程度の人員(実員)を充足するかを示す割合、いわゆる充足率が導入された。
 当時は冷戦時代であり、陸自については、期待されていた主要な役割が大規模な着上陸侵攻への対処であった。このため、実員充足の前提として、実際に敵が侵攻してくるまでに一定の期間が必要であることから平素は充足率を8割強に抑制していたが、有事になれば緊急に募集・採用を行い、必要な人員を充足することが想定されていた。また、海自や空自においても、平素から周辺海空域における警戒監視やスクランブルなどの任務を実施していることなどから、全体的には9割程度の充足率を維持してきたが、有事には陸自と同様に緊急に募集・採用を行うことが想定されていた。
 しかしながら、今日においては、弾道ミサイル攻撃などへの対応や、テロリスト・特殊部隊による攻撃、大規模・特殊災害など発生の予測が困難な事態に即応し、PKOなど海外における活動にも主体的・積極的に取り組むため、普段から十分に訓練された自衛官を第一線部隊に可能な限り確保しておくことが求められるようになっている。
 07大綱以降、自衛隊の組織の見直しを図り定員を削減した結果、充足率は向上したが、実員については、平成18年度からの総人件費改革により約8,700人の純減を行うこととしており、このうち平成22年度までに約7,200人の純減を実施することとしている。
 このような中で、09(平成21)年12月に閣議決定された「平成22年度の防衛予算の編成の準拠となる方針」の「基本的考え方」では、「自衛官の実員について、極力効率化を図りつつ、第一線部隊の充足を高め、即応性・精強性の向上を図る。」とされている。また、「留意事項」では、「人員を効率的・効果的に活用するため、可能な業務について部外委託等を行うほか、質の高い人材の確保・育成を図り、教育を充実するとともに、社会の少子化、高学歴化が進む中で自衛隊の任務の多様化等に対応し得る隊員の階級・年齢構成等の在り方について検討すること。」とされている。防衛省としては、これらを踏まえた各種施策について検討している。
 
自衛官の人員(実員)充足の現状

 

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