第III部 わが国の防衛に関する諸施策 

2 戦闘機の生産・技術基盤について

 自衛隊の主力装備品の一つである戦闘機については、96(同8)年から生産してきたF-2戦闘機の生産が平成23年度の納入をもって終了する。これ以降は、わが国において戦闘機を生産しない空白の期間が生ずる見込みである。このように戦闘機を生産しない期間が生じることが、わが国の戦闘機の生産技術基盤にいかなる影響を与えるのかについて、有識者を含め官民で整理することを目的に、「戦闘機の生産技術基盤の在り方に関する懇談会」を09(同21)年6月に設置し、7回の会議を経て同年12月に中間取りまとめを公表した1。その概要は次のとおりである。

(1)戦闘機の生産技術基盤の現状と役割
 わが国では、これまでの継続的な戦闘機の生産、研究開発、戦闘機を運用するために必要な整備や修理により、国内の生産・技術基盤が維持向上されてきており、このような基盤によって、戦闘機を運用する際に必要不可欠である「高い可動率の維持」、「我が国の運用に適した能力向上等」、「安全性の確保」という三つの要素を確保してきた。

(2)生産中断による影響
 戦闘機の生産中断は、主として生産工程で培われた技能を適用する機会の喪失、研究開発や戦闘機の整備や修理で培われた技術者の減少、戦闘機にかかわる調達数量減少などによる下請企業の撤退などを招く。この結果、戦闘機の整備・修理などの運用支援能力の低下や、将来の戦闘機に関する研究開発に必要となる技術水準の維持向上が困難になるといった影響が懸念される。

(3)戦闘機の生産技術基盤の将来に向けて
 わが国の防衛力を発揮する上で重要な要素である戦闘機の生産中断がその運用や将来の研究開発に与える影響を踏まえれば、戦闘機の生産技術基盤の維持・育成はきわめて重要な課題である。防衛省としては、現在実施している戦闘機関連事業を着実に推進するとともに、将来、戦闘機の開発を選択肢として考慮することができるように調達、研究開発を進めていく必要がある。このような基本的考え方に基づき、今後取り組むべき課題として次の3点がある。
1) 「高い可動率の維持」、「我が国の運用に適した能力向上等」、「安全性の確保」という三つの要素に不可欠な基盤は国内に維持するという観点から、今後、戦闘機の運用上国内に維持しなければならない基盤を精査する。
2) 将来の戦闘機に関する研究開発について、シーズ・ニーズおよびわが国における生産・技術基盤の状況などを踏まえつつ、中長期的視点に立ったビジョンを策定する。
3) 戦闘機の生産技術基盤の一部には、その他の航空機の開発・生産により維持されるものもあることを踏まえ、航空機全体に共通した基盤の維持・活性化につながるものとして、自衛隊機の開発時に培われた技術の民間転用などの施策を検討・推進する。
 
戦闘機の生産技術基盤の在り方に関する懇談会


 
1)「戦闘機の生産技術基盤の在り方に関する懇談会」中間とりまとめは
http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/meeting/sentouki/houkoku/houkoku.html>を参照。


 

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