2 インセンティブ契約制度の拡充
防衛省が契約のために行う予定価格の算定において契約別の工数などに関する資料が十分に得られないなどの場合に、契約の履行に基づく実績額の監査を行った後に支払代金を確定する契約方法をとることが少なくない。この場合、企業の契約履行過程における効率化努力によりコストダウンを達成しても、当初契約額からコストダウン分を減額して契約変更を行うため、コストダウンの成果が企業側に還元されず、さらに、次回契約以後の契約額、利益額の減少につながることから、企業側にコストダウンに取り組む意欲が生じにくい。他方、費用超過となっても契約額は増額されないことから企業の不満も多い。
インセンティブ契約制度は、企業に対し、利益の増加を動機づけとして積極的なコストダウン活動を促し、装備品の調達価格低減を図ろうとするものである。企業のコストダウン活動は、生産性の向上、低コスト体質の強化・促進にも資するものであり、ひいては防衛生産・技術基盤の強化にもつながるものと考えられる。欧米諸国では、発生コストを補償した上でコストダウンなどが実現した場合に利益を追加的に付与するコスト補償型契約や、企業の自助努力を期待する確定契約を活用している。
防衛省においても、99(同11)年に減価提案制度を導入し、02(同14)年に制度を拡充してインセンティブ契約制度として改正し運用してきた。しかしながら、08(同20)年までの9年間で2件の適用にとどまり、調達価格の低減が達成されたとは言いがたい状況であった。このため、インセンティブ契約制度を全般的に見直し、その対象を企業のコストダウン活動全般に拡大し、企業提案に対して審査手続の面から改善を図るなど、実効性を高めるための新たな制度を施行した。10(同22)年1月までに2件を採用している。