6 東南アジア諸国との防衛協力・交流
東南アジア諸国は、わが国と中東地域や欧州地域とを結ぶ海上交通の要衝を占める地域に位置するとともに、わが国と密接な経済関係を有している。また、この地域においては、二国間の対話のみならず、東南アジア諸国連合(ASEAN:Association of Southeast Asian Nations)地域フォーラム(ARF:ASEAN Regional Forum)をはじめとするアジア太平洋地域における多国間の安全保障枠組における協力が重要である。次節で述べるように、近年議論が活発に行われている、人道支援・災害救援、海上安全保障、平和維持・平和構築といった非伝統的安全保障分野においては、国際的な協力関係が不可欠である。これらの国々との二国間・多国間対話の枠組を通じて、安全保障上の諸問題に対する信頼・協力関係を増進させることは、わが国と東南アジア諸国双方にとって有意義である。また、アジア太平洋地域における安全保障枠組の構築に関しても、二国間や多国間の枠組を通じた議論が近年盛んに行われている。防衛省としても、わが国の安全保障環境の改善に向けた姿勢を積極的に説明するとともに、東南アジア諸国との意見交換を通じ、地域における安全保障に関する協力枠組の構築に向け、主体的・積極的に取り組んでいる。
具体的には、シンガポール、ベトナム、タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシアとは閣僚級・次官級の会談を実施し、各国との間の防衛協力・交流のあり方、地域における安全保障協力の枠組に関する意見交換を活発に行った。また、10(同22)年1月には、中江防衛事務次官が防衛事務次官として初めてASEAN事務局を訪問し、サヤカーンASEAN事務次長と意見交換を行っている。また、同年5月、榛葉防衛副大臣がラオス、カンボジアおよび東ティモールを訪問し、両国間の防衛協力・交流の強化を図るとともに、非伝統的安全保障分野における協力やキャパシティ・ビルディング支援などの具体的協力について意見交換を行った。さらに、ARFの枠組においては、09(同21)年6月には、カンボジアとARF・PKO専門家会合の共同議長を務め、また、11(同23)年3月には、インドネシアと第2回ARF災害救援実動演習(ARF-DiREx2011)の共催を予定するなど、わが国として、地域における安全保障対話と具体的な協力の進展に積極的に取り組み、地域の安全保障環境の改善に主体的役割を果たしている。
参照 III部3章3節