第III部 わが国の防衛に関する諸施策 

3 日印防衛協力・交流

 インドは、わが国と中東、アフリカを結ぶシーレーン上のほぼ中央に位置し、ほとんどの貿易を海上輸送に依存するわが国にとって地政学的にきわめて重要な国である。また、インドとわが国は、民主主義、法の支配、人権の尊重、資本主義経済といった基本的な価値観を共有するとともに、アジアおよび世界の平和と安定、繁栄に共通の利益を有しており、戦略的グローバル・パートナーシップを構築している。このため、近年、特に、日印は安全保障分野での関係を強化しており、08(同20)年10月にはシン印首相が訪日し、内閣総理大臣との間で、米国、豪州に次いで、安全保障分野の共同宣言である「日印間の安全保障協力に関する共同宣言」5が署名された。防衛大臣間の会合、防衛政策対話を含む次官間の会合、局長級による防衛当局間協議、二国間および多国間の訓練を含む軍種間の交流などの枠組により、防衛当局間の協力を進めていくことを盛り込んだ同共同宣言は、今後の日印間の安全保障分野での協力の指針となるものである。また、09(同21)年11月にはアントニー印国防大臣が訪日し、北澤防衛大臣との間で、さらに、10(同22)年4月には、北澤防衛大臣が訪印し、アントニー印国防大臣との間で、日印防衛相会談を行い、地域の安全保障情勢、海上安全保障や両国の防衛協力・交流について意見交換を行った。なお、09(同21)年11月の会談の際には「共同プレス発表」を発出し、さまざまなレベル・分野で両国の防衛協力・交流を推進することで一致した。
 日印両国は、テロ対策、平和維持・平和構築、災害救援などの非伝統的安全保障分野において協力を進めることで一致しているが、特に、海上安全保障分野における具体的な協力を強化するとの観点から、09(同21)年10月に第1回日印海上安全保障対話を実施した。同年12月には、鳩山内閣総理大臣(当時)が訪印し、シン印首相との間で、日印間の安全保障協力を促進するための「行動計画」を策定した。その中で、海賊対処における協力や、海上における共同訓練の実施など、海上安全保障における協力を実際に推進するための項目が盛り込まれた。そのほか、09(同21)年4月には、07(同19)年以来2回目となるインド主催の多国間海上共同訓練「マラバール09」6に参加し、対空戦・対潜戦・対水上戦などの各種戦術訓練を実施し、海上安全保障における自衛隊と印軍の協力関係・対処能力の向上に努めている。
 
図表III-3-2-4 3) 最近の日印防衛協力・交流の主要な実績
 
北澤防衛大臣とアントニー印国防大臣


 
5)<http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2009/11/09.html>参照。

 
6)わが国のほか、米国およびインドが参加。


 

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