第III部 わが国の防衛に関する諸施策 

2 日韓防衛協力・交流

 韓国は、歴史的にも、経済・文化などの各分野においてわが国と最も密接な関係を有してきた隣国の一つであり、また、地政学的な観点からもわが国の安全保障にとってきわめて重要な国である。さらに、わが国と同様、民主主義、法の支配、人権の尊重、資本主義経済といった基本的な価値観を共有するとともに、米国の同盟国として米軍の駐留を認めているなど、その戦略的利害関係の多くが共通している。このため、両国が、経済面だけでなく、安全保障面においても緊密に連携していくことは、アジア太平洋地域における平和と安定にとって大きな意義がある。
 これまで日韓の防衛当局は、94(同6)年以降、両国防衛相がほぼ毎年交互に訪問するなど、相互理解・相互信頼を増進させてきた。
 他方、日韓両国が直面している安全保障上の課題は、北朝鮮の核・ミサイル問題のみならず、テロ対策や、PKO、大規模自然災害への対応、海賊対処、海上安全保障など、広範にわたる複雑なものとなってきている。
 そのため、こうした安全保障上の課題に両国が効果的に対応していくためには、相互理解・信頼醸成の増進のための交流にとどまらず、より広範かつ具体的な防衛協力を行っていくことが重要である。
 このような認識のもと、09(同21)年4月の日韓防衛相会談の際、わが国は韓国との間で、日韓の防衛分野における合意文書としては初めてとなる「日本国防衛省と大韓民国国防部との防衛交流に関する意図表明文書」4に署名した。本文書は、これまでの伝統ある日韓の交流実績を踏まえ、各レベルにおける交流や、国際平和協力業務など各分野における協力の今後の方向性を示したものであり、これを踏まえ、09(同21)年10月に局長・審議官級の第17回および第18回防衛実務者対話を、昨年12月に外務当局を含めた第8回安全保障対話を実施するなど、防衛協力・交流を深化させている。
 また、日韓両国は、アジア太平洋地域の平和と安定にとって不可欠の存在である米国と同盟関係にあることから、日米豪3か国協力と同様に、近年、日米韓3か国での協力が進展している。10(同22)年6月には、第9回IISSアジア安全保障会議において09(同21)年に引き続き二度目となる日米韓防衛相会談を行った。この会談では、韓国哨戒艦沈没事件を受けて韓国のこれまでの取組を支持し、北朝鮮を非難するとともに、情報共有や拡散に対する安全保障構想(PSI:Proliferation Security Initiative)などの分野での3か国による協力の検討を確認した。また、人道支援・災害救援などの分野においても協力を推進していくことで一致した。同年7月、09(同21)年12月に引き続き訪韓した長島防衛大臣政務官と張秀萬(チャン・スマン)国防次官などとの会談においても、哨戒艦沈没事件を踏まえた日米韓防衛協力の重要性について一致している。
 わが国としては、今後とも、防衛分野においても、韓国との未来志向の協力関係を発展させていくことが重要であると考えている。
 
図表III-3-2-4 2) 最近の日韓防衛協力・交流の主要な実績
 
長島防衛大臣政務官と金泰榮(キム・テヨン)韓国国防部長官
 
折木統合幕僚長と李相宜(イ・サンイ)韓国合同参謀議長(当時)


 
4)<http://www.mod.go.jp/m/update/youjin/2009/04/23b.html>参照。


 

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