2 各国との防衛協力・交流の推進
1 日豪防衛協力・交流
オーストラリアは、わが国にとってアジア太平洋地域の重要なパートナーであり、同じ米国の同盟国として、民主主義、法の支配、人権の尊重、資本主義経済といった基本的な価値観のみならず、安全保障分野において戦略的利益や関心を共有している。特に、近年、グローバルな課題については、各国が一致して取り組むべきとの認識が国際社会に浸透してきていることから、アジア太平洋地域における責任ある国として、わが国とオーストラリアは、災害救援や人道支援活動などの非伝統的安全保障分野を中心とした相互協力・連携を強めている。
日豪二国間の防衛協力・交流は、07(同19)年3月、日豪両首脳の間で、米国以外では初めての安全保障分野の共同宣言である「安全保障協力に関する日豪共同宣言」
1を発表して以来、着実に進展している。この共同宣言に基づき、07(同19)年6月および08(同20)年12月に2度にわたって開催された日豪外務・防衛閣僚協議(「2+2」)についても、わが国はこれまで同盟国である米国以外とは行ってこなかったものであり、日豪外務・防衛当局双方の政治レベルにおいて、今後の安全保障協力の強化が謳われた意義は大きい。
このようなハイレベルでの安全保障協力に関する認識の一致を受け、現在はより実際的・具体的な協力の段階に移行している。日豪はこれまで、92(同4)年のカンボジア国連PKOに参加して以来、東ティモール国連PKOやスマトラ沖地震・インド洋津波の際の国際緊急援助活動などにおいて連携を深めてきた。こうした活動を自衛隊と豪軍が行う際、現場において水・食料・燃料・輸送などの物品や役務を、確立された統一的な手続により相互に融通できるようになれば、日豪間の戦略的パートナーシップが一層円滑・強固なものとなる。また、このような協力の円滑化・強化により、わが国とオーストラリアが行うPKOや国際緊急援助活動などの実効性は飛躍的に向上し、アジア太平洋地域の平和と繁栄に貢献するとともに、協力を通じた域内秩序の形成にも資することとなる。このため、09(同21)年12月に行われた日豪首脳会談において、日豪両国は、物品役務相互提供協定(ACSA:Acquisition and Cross-Servicing Agreement)
2についての交渉を開始することで一致した。これを受けて、日豪両国は交渉を行い、10(同22)年5月に行われた第3回日豪「2+2」に際し、ACSAおよびACSAに基づく手続取決めの署名が行われた。また、署名式と同日に行われた日豪「2+2」および日豪防衛相会談においても、ACSAが自衛隊と豪軍との間の緊密な防衛協力の基盤を確立するものであり、ACSAへの署名は防衛協力強化への両国の強い決意の表れであるとの認識が共有された。これまで、わが国がACSAを締結したのは米国とのみであり、日米安全保障体制を前提とした米国以外の国との初めてのACSAの締結は、今後わが国が行う防衛協力・交流にとって大きな意味を持つものと考えられる。今後、ACSAを締結するためには、国会の承認が必要であり、また、その実施のための国内法を早急に整備する必要がある。
一方、近年、米国を含めた日米豪3か国の協力も増えている。日豪は、先に述べたとおり、ともに米国の同盟国であると同時に、基本的な価値観を共有しており、アジア太平洋地域および国際社会が直面するさまざまな課題の解決のため、緊密に連携・協力してきている。このような連携・協力を効果的、効率的なものとするためには、地域の平和と安定のために不可欠な存在である米国を含めた日米豪3か国による協力を積極的に推進することも重要である。このような認識のもと、07(同19)年6月には、第6回IISS(The International Institute for Strategic Studies)(英国国際戦略研究所)アジア安全保障会議(シャングリラ会合)
3の機会をとらえ、初めてとなる日米豪防衛相会談が行われた。また、事務レベルにおいては、07(同19)年4月、08(同20)年4月、09(同21)年11月の3回にわたって、3か国の局長級会合である日米豪安全保障・防衛協力会合(SDCF:Security and Defense Cooperation Forum)が行われ、3か国間の防衛協力などについて協議を行っている。さらに、07(同19)年5月と08(同20)年2月には、日米豪3か国の防衛当局者が参加して太平洋長距離航空輸送セミナー(PGAMS:Pacific Global Air Mobility Seminar)が行われ、今後の日米豪3か国の航空輸送分野における協力について意見交換を行った。また、08(同20)年2月のセミナーにおいては、陸自CH-47の米空軍C-17への搭載について実機を用いた検証を行った。09(同21)年9月には、07(同19)年10月に続き、海自、米海軍および豪海・空軍との間で、海自P-3Cなどによる日米豪3か国の訓練を実施している。
今後も、日豪間においては、日米豪3か国協力を含め、人道支援や災害救援などの非伝統的安全保障分野を中心に、防衛協力・交流の強化をさらに進めていくことが重要である。