1 安全保障対話・防衛協力・交流の意義と変遷
冷戦終結後、軍事力や国防政策の透明性を高めるとともに防衛当局者間の対話・交流、部隊間の各種共同訓練などを通じて相互の信頼関係を深めることで、無用な軍備増強や不測の事態の発生とその拡大を抑えることが重要との認識が拡大してきた。また、国家間の相互協力・依存関係が一層進展する今日、新たな脅威や多様な事態への対応は、国際社会が協力して取り組むべき課題であるとの認識も広まってきた。
特に近年は、安全保障環境の改善に向けて積極的に取り組むため、防衛交流は質的に深化し、量的に拡大する趨勢(すうせい)にある。具体的には、1)信頼醸成に加え、国際社会との協力関係の構築・強化の意義が高まり、2)交流対象国が近隣諸国を越えてグローバルな広がりをみせている。また、3)親善的のみならず実務的な性格を有する交流や、対話のみならず行動をともなう交流の重要性が高まり、相手国によっては、防衛交流の内容が、単なる交流から防衛協力を行う段階へと発展・深化してきている。さらに、4)多国間の安全保障枠組についても、アジア太平洋地域における安全保障面での取組は、対話と信頼醸成の段階から、域内秩序の形成や共通規範構築の段階に移行しつつある。
このような情勢を踏まえ、防衛省としても、今後の国際的な安全保障環境の改善に資するための取組を積極的に展開していくためには、限られた資源を効果的・効率的に活用していくとの視点から、各国・地域の特性を踏まえた方針に基づいて、戦略的に防衛協力・交流を実施していくことが必要である。特に、わが国周辺の国や地域においては、わが国との対立感やわが国に対する警戒感をなくし、未来志向の視点で協調的・協力的な雰囲気を醸成し、二国間・多国間の場で積極的な交流・対話を進めることが必要である。また、災害救援、テロ対策などの非伝統的な安全保障分野における相互協力を通じ、全体的な協力感・協調感を醸成することも重要であり、こうした各種取組を基礎として、域内秩序の形成や共通規範構築に向けて努力していく必要がある。
本節では、現在、防衛省・自衛隊が取り組んでいる各国との防衛協力・交流などについて説明し、次節では、地域における安全保障枠組・協力への取組などについて説明する。
(図表III-3-2-1・2・3 参照)