東南アジアの各国は、近年、経済成長などを背景として軍の近代化を進めている。
　シンガポールについては、09(同21年)5月、米国製F-15戦闘機の初回納入分4機を、米国アイダホ州に駐留しているシンガポールの分遣隊が受領している。合計24機を保有する計画で、12(同24)年までに全機がシンガポール側に納入される予定である。シンガポールはF-35共同開発にもアジアで最初に参加している。また、シンガポールの海軍力については、09(同21)年、ステルス性能を有するフランス製フォーミダブル級フリゲート6隻全ての就役が完了した。さらに、05(同17)年にスウェーデン製の中古潜水艦2隻を購入し、近代化改修の後、10(同22)年中に納入される予定である。

　マレーシアは、07(同19)年からロシア製Su-30戦闘機の導入を開始し、09(同21)年、18機全ての納入を完了させた。海軍力については、マレーシアとしては初となる潜水艦(フランスとスペインが共同開発したスコルペン級潜水艦)が09(同21)年1月に就役し、2番艦も同年11月に就役した。また、ドイツ製ケダ級コルベットを6隻発注しているが、10(同22)年中に全てが就役完了する予定である。

　インドネシアは03(同15)年にロシア製Su-27戦闘機およびSu-30戦闘機をそれぞれ2機導入しているが、今後、合計でSu-27、Su-30をそれぞれ5機保有する予定である。また、海軍力については、09(同21)年、オランダ製シグマ級コルベット4隻の就役が完了した。さらに、インドネシアは07(同19)年9月、ロシアとの間で、軍事技術および防衛協力の強化で合意し、10億米ドル規模のロシア製兵器の調達を政府借款で行う合意書に署名しており、この合意にはキロ級潜水艦2隻などの兵器が含まれていると伝えられている。
　タイは07(同19)年に、スウェーデン製JAS-39戦闘機および早期警戒システムを搭載した航空機の導入を決定している。また、タイは現在潜水艦を保有していないが、潜水艦調達の検討を開始したとも伝えられている¹。
　ベトナムは04(同16)年にSu-30を4機導入しているが、同機を追加導入する報道もなされている²。また、09(同21)年12月、ベトナムがロシアからキロ級潜水艦6隻を購入する契約を締結したと伝えられている³。
　東南アジアの国々の多くは近年国防費を伸ばしており、これが装備の近代化を可能にしている要因の一つであると考えられるが、このほかに、近隣諸国の軍事力発展に反応するという東南アジア各国間の関係や、中国の影響力の拡大、地域安全保障機構の信頼醸成措置としての役割が十分でないことがその背景にあるとの指摘がある⁴。