2 米国との関係
ロシアは米国との間で、09(同21)年4月、STARTIに代わる戦略攻撃兵器の削減および制限に関する法的拘束力のある新たな条約の締結について両国政府間の交渉を開始することで合意した
10。
ロシアは、米国が推進する弾道ミサイル防衛(MD:Missile Defense)の一部をチェコおよびポーランドに配備するための本格的交渉の開始が合意されたことに対し、このシステムがロシアに向けられたものであり、自国の核抑止能力に否定的影響を与える可能性があるとして強く反発した。しかし、09(同21)年9月、米国はMDシステムの欧州配備計画の見直しを発表し
11、これに対してロシアは一定の評価を与えた。ただし、米国はMDの欧州配備計画自体を中止したわけではない。
さらに、10(同22)年4月、米露両大統領により、STARTIに代わる新たな戦略兵器削減条約への署名が行われた。同条約ではMDシステムについて、戦略攻撃兵器と戦略防衛兵器の相互関係が存在すること、この相互関係は戦略核兵器の削減に伴いますます重要になっていくこと、現在の戦略防衛兵器は米露両国の戦略攻撃兵器の実行可能性と有効性を損なわないとしているほか、ICBMなどの発射装置をMDのために、MDの発射装置をICBMなどのために使用することを禁じている。ただし、ロシアは米国がMDに関わる能力を量的または質的に発展させ、その戦略核戦力の潜在能力を脅かす場合には効力を有しなくなるものと解しており
12、今後の米国によるMD計画の進展に伴う今後のロシアの対応が注目される。
11)米国は、イランの欧州への中・短距離ミサイルの脅威が予測よりも急速に進展したことなどを理由として、これに対応するため、11(平成23)年までに海上配備型ミサイルおよび移動式レーダーを、以後20(同32)年までに段階的に陸上配備型ミサイルを含めMDシステムを整備していく方針である。