第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

2 通常戦力など

 ロシアは、通常戦力についても新型装備を整備する必要性について認識し5、「2007年から2015年までの装備国家綱領」に基づき開発・調達などを行っていると考えられる。ロシアは10(同22)年1月、いわゆる「第5世代戦闘機」の初飛行試験を行ったが、その開発動向には今後、注目していく必要がある6
 また、ロシア軍は、すべての戦闘部隊の常時即応部隊への改編を進めるなどその即応態勢の維持に努めており、欧州方面などにおいて、通常戦力による大規模な演習を行っている。このほか、07(同19)年に続き、08(同20)年にも海軍空母部隊が地中海に展開するとともに、ソマリア沖・アデン湾での海賊対処活動に参加し、08(同20)年には、冷戦後初めて海軍艦艇が中南米諸国を訪問するなど、軍の活動は活発化しつつある。
 しかし、若年人口の減少、低劣な軍人の生活環境などの結果、人材確保難や軍の規律の弛緩(しかん)といった課題もあり、通常戦力の近代化の進展は必ずしも十分ではない。
 ロシア軍の将来像については、今後のロシアの経済発展と社会発展の水準に左右される不透明な部分もあり、今後の動向について引き続き注目していく必要がある。


 
5)09(平成21)年11月のメドヴェージェフ大統領による年次教書演説および10(同22)年2月に策定された軍事ドクトリンでは、新型装備の必要性について触れられている。

 
6)戦闘機の世代区分に明確な基準はないが、「第5世代戦闘機」は、各種電子機器やステルスなどの最新の技術を結合させることにより、「第5世代」以前の戦闘機よりも高い能力を持つとされている。各種報道によれば、ロシアの「第5世代戦闘機」PAK FA(将来型前線用航空機)については、2015年までの量産化・装備化が目標とされている。ロシアにおける「第5世代」以前の戦闘機の特徴を報道(ロシア新聞(10年2月4日))を基に挙げれば、以下のとおりである。
 第1世代:第2次世界大戦後に出現し、機関砲を装備した音速以下のジェット機(例:MiG-15、MiG-17)
 第2世代:ミサイルを装備した音速の戦闘機(例:MiG-19、MiG-21)
 第3世代:より強力なエンジン、より発達したレーダーを装備した戦闘機(例:MiG-23、MiG-27)
 第4世代:新型機上装置、強力なレーダー、幅広い兵装を持った戦闘機(例:MiG-29、Su-27)
 発達型第4世代:推力偏向エンジンおよびフェーズド・アレイレーダーを装備し、多機能性を有し、デジタルコクピットを備えた戦闘機(例:MiG-29SMT、MiG-35、Su-35)


 

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