第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

3 国防費

 中国は、2010年度の国防予算を約5,191億元13と発表した14。発表された予算額を昨年度の当初予算額と比較すると、約9.8%の伸びとなり15、これまでの水準は下回るものの16、依然として高い伸び率を維持しており、中国の公表国防費は、引き続き速いペースで増加している。公表国防費の名目上の規模は、過去5年間で2倍以上、過去20年間で約18倍の規模となっている。中国は、国防と経済の関係について、「2008年中国の国防」において、「経済建設と国防建設を協調的に発展させる方針を堅持する」と説明し、国防建設を経済建設と並ぶ重要課題と位置付けている。このため、中国は経済建設に支障のない範囲で国防力の向上のための資源投入を継続していくものと考えられる。
 また、中国が国防費として公表している額は、中国が実際に軍事目的に支出している額の一部にすぎないとみられていること17に留意する必要がある。たとえば、装備購入費や研究開発費などはすべてが公表国防費に含まれているわけではないとみられている。
(図表I-2-3-1 参照)
 
図表I-2-3-1 中国の公表国防費の推移


 
13)中央財政支出における国防予算。なお、全国財政支出における2010年度国防予算は約5,321億元とされており、同予算額を前年度の全国財政支出における国防予算(当初予算)と比べると、約10.7%の伸びとなる。

 
14)外国の国防費を単純に外国為替相場のレートを適用して他の通貨に換算することは、必ずしもその国の物価水準に照らした価値を正確に反映するものではないが、仮に2010年度の中国の国防予算を1元=14円で換算すると約7兆2,671億円となる。なお、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI:Stockholm International Peace Research Institute)「2010年版年鑑」(10(同22)年6月)は、09(同21)年の中国の軍事支出を約1,000億米ドルと見積もっており、米国に次ぐ世界第2位としている。

 
15)中国は、2010年度の国防費の伸び率を「前年度比7.5%の増加」と発表したが、これは2009年度執行額と2010年度当初予算を比較した伸び率である。

 
16)中国の公表国防費は、当初予算比で、2009年度まで21年連続で二桁の伸び率となっている。

 
17)米国防省「中華人民共和国の軍事および安全保障の進展に関する年次報告」(10(同22)年8月)は、中国の国防費について、2009年度の軍事関連支出は1,500億ドル以上であると見積っている。また、同報告書は、中国の公表国防費は主要な支出区分を含んでいない、と指摘している。


 

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