第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

4 対外関係

(1)中国・ロシアとの関係
 韓国と中国との間では、艦艇や航空機による相互訪問が行われるなど軍事交流を進展させるための努力がなされている。08(同20)年11月には、両国の海・空軍間におけるホットラインが開通した。また、同年5月の韓中首脳会談では、韓中関係を従来の「全面的協力パートナーシップ」から「戦略的協力パートナーシップ」に格上げすることに合意している。しかしながら、両国の安全保障分野における関係は、経済をはじめとする他の分野に比べ、初歩的なレベルにとどまっている。
 韓国とロシアとの間では、近年、軍高官の交流や艦艇の相互訪問などの軍事交流が行われているほか、軍事技術、防衛産業、軍需分野の協力についても合意されている。また、08(同20)年9月の韓露首脳会談では、今後の両国関係を「戦略的協力パートナーシップ」に格上げすることで合意した。さらに、09(同21)年7月には、李相憙国防部長官(当時)がロシアを訪問、ロシアのセルジュコフ国防相と会談12するなど、両国の安全保障における関係に進展が見られる。

(2)海外における活動
 韓国は、92(同4)年に国連に加盟し、翌93(同5)年にソマリアに工兵部隊を派遣して以来現在まで、継続して各種の国連平和維持活動(PKO:UN Peacekeeping Operations)に参加している。韓国は、PKOに積極的に参加することは、過去に韓国が受けた国際的な支援を国際社会に還元するという意味とともに、有事の際に国際社会の支援を確保することにも役立つ13としており、09(同21)年12月には、PKOへの派遣要員を現行の水準から大幅に拡大する方針を明らかにしている14
 韓国は、米国などによるアフガニスタンでの軍事作戦を支援するため、医療支援団や工兵部隊を派遣、07年12月に任務を終了し撤収していたが、10(同22)年2月、パルワン県における韓国の地方復興チーム(PRT:Provincial Reconstruction Team)要員約140名の警護を目的とした350名以内の軍部隊の派遣を決定し、10(同22)年7月から、アフガニスタンにおける活動を再開している。韓国は、米国の要請を受けてイラクに部隊を派遣していたが、08(同20)年12月に任務を終了し、撤収した。また、海軍艦艇をソマリア海域に派遣し、09(同21)年4月から、韓国船舶の護送および連合海上部隊(CMF:Combined Maritime Forces)の海上安全活動(MSO:Maritime Security Operation)に従事させている。


 
12)李相憙国防部長官(当時)は、記者会見で、08(平成20)年の韓露首脳会談の合意事項に言及し、今回の会談が両国の軍事関係を1段階格上げする重要な契機になったと評価している。

 
13)「2008韓国国防白書」による。

 
14)韓国は、韓国軍のPKOへの参加を拡大するための法的・制度的基盤を整えるとしており、09(平成21)年12月には、国際連合平和維持活動参与に関する法律が国会を通過している。


 

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