3 能力強化の重点分野
今回のQDRは、四つの戦略的優先事項を実施するためには、次の六つの任務領域で戦力を強化する必要があるとしている。
1) 米国の防衛及び国内における非軍事部門の支援:米国本土への攻撃に際しての所要の態勢や、国内の政府関係機関との協力関係を強化する必要がある。このため、不測事態対処部隊の再編・整備、陸・海・空・宇宙・サイバー空間における警戒能力の強化などに取り組む必要があるとしている。
2) 反乱鎮圧作戦、安定化作戦、対テロ作戦での成功:米国が現在戦っている戦争に勝利するために必要な諸能力を強化する。このため、回転翼機の増加、情報・監視・偵察(ISR)用の有人・無人飛行システムの強化、特殊部隊の主要装備の増強などを行うとしている。
3) パートナー国の治安能力の構築:平和で安定した国際秩序を保つためには、パートナー国における治安部隊の能力構築を支援することが重要である。このためには、語学能力の向上、地域及び文化に関する知識の深化などが必要であるとしている。
4) アクセス拒否環境下における攻撃の抑止・打破:多岐にわたる洗練された武器などを有する国家が、米軍部隊の展開を阻害するアクセス拒否能力を行使する可能性がある。米軍はこのような環境下でも米国と同盟国を守ることができるような能力を保有する必要がある。このため、長距離攻撃能力の向上や強靭な前方展開態勢の構築に取り組む必要があるとしている
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5) 大量破壊兵器の拡散阻止・対抗:大量破壊兵器の除去にあたる常設の統合任務部隊司令部を創設するとしている。また、核物質の分析・識別能力を強化するほか、核兵器がテロリストの手に渡ることを阻止するため、全ての核関連物質の防護を万全とするとしている。
6) サイバー空間における効果的な作戦:サイバー空間において国防省が行う活動について包括的なアプローチを発展させることで、情報セキュリティが国防省の優先事項の一つとして重視されるような環境を構築する。また、サイバー空間の専門家を育成するとともに、新設するサイバーコマンドに国防省のサイバー活動の司令機能を集中させるとしている。
3)北朝鮮とイランは新しい弾道ミサイルシステムを開発・配備しており、前方展開された米軍部隊を脅かすおそれがあるとしている。また、中国については、大量の中距離弾道ミサイルと巡航ミサイル、先進兵器を装備した新型の攻撃型潜水艦、能力を向上させつつある高性能の長距離防空システム、電子戦およびコンピュータネットワーク攻撃能力、先進的戦闘機、対宇宙システムを開発・配備しているが、その軍事力近代化計画については限られた情報しか明らかにされていないため、中国の長期的な意図について疑問を生じさせているとしている。したがって、米中関係は、多次元的で、かつ、相互利益を増進するようなやり方で信頼関係を強化し誤解を減らすプロセスによって下支えされたものでなければならならず、両国が不一致について議論する開かれたコミュニケーション・チャンネルを維持する必要があるとしている。